公開日:2022.12.26
更新日:2024.09.27
「バイオプラスチック」って、どんなプラスチック?わかりやすく解説します!
私たちの暮らしを豊かにしてくれるプラスチック。
プラスチックは大変便利な素材ですが、限りある資源の石油から作られ、また捨てられてしまうと、分解されずにごみとして残ってしまうという問題があります。
そういった課題を解決するために、プラスチックは活発にリサイクルが行われています。
その一方で、自然に分解されるプラスチックや、原料に石油ではなく植物を使って、二酸化炭素の排出量を少なくしているプラスチックも開発されています。
このようなプラスチックを、バイオプラスチックとよびます。この記事では、バイオプラスチックについてわかりやすく解説します。
バイオプラスチックって、なに?
軽くて丈夫なプラスチックは、私たちの暮らしを豊かにしてくれる素材です。身の回りのさまざまな製品がプラスチックで作られ、プラスチックのない生活はもう考えられません。
今までの製法で作られてきたプラスチックは、ほとんどが自然界では分解されません。
そのため、不法投棄されたりポイ捨てされたりしてしまうと、ごみとなって、自然の中にずっと残ってしまうという問題点があります。
また、プラスチックの原料となる石油は、限りある貴重な資源です。
このようなプラスチックごみの問題や、石油の使いすぎの問題は、地球環境にとってたいへん大きな課題となっています。
そのため、プラスチック業界では、リデュース(ごみをへらす)・リユース(何度も使う)・リサイクル(再生する)の「3R」をはじめとしたエコの取り組みが、たいへん盛んになっています。
その取り組みの中で生まれたのが、バイオプラスチックです。
バイオプラスチックには、2つの種類があります。
時間がたつと分解されてごみにならないプラスチックと、石油ではなく植物などを原料にして作られるプラスチックの2種類です。
バイオプラスチックは、今までのプラスチックの課題を乗りこえられる可能性を秘めているプラスチックなのです。
バイオプラスチックの種類
バイオプラスチックには、「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」の2つの種類があります。
バイオプラスチックの種類(1)生分解性プラスチック
バイオマスプラスチックは、植物などの生物資源を原料に作られるプラスチックのことです。
生物資源を英語で「バイオマス」と言うことから、バイオマスプラスチックと呼びます。
バイオマスプラスチックには、すべてがバイオマスプラスチックの「全面的バイオマス原料プラスチック」と、原料の一部がバイオマスプラスチックの「部分的バイオマス原料プラスチック」に分けられます。
バイオプラスチックには、以上に説明したとおり、生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの2つの種類があり、その関係性は上の図のようになります。
つまり、この2つのバイオプラスチックは、まったく違う種類のプラスチックというわけではありません。
どちらか片方の特徴しか持たないバイオプラスチックもあれば、両方の特徴をもつバイオプラスチックもあります。
バイオプラスチックの作り方
バイオプラスチックの作り方には、いくつかの方法があります。
ここでは、生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの両方の特徴をあわせもつ、ポリ乳酸
のバイオプラスチックの作り方を紹介します。
ポリ乳酸の原料であるサトウキビやトウモロコシなどの植物から取り出されたでんぷんや糖を発酵するなどして乳酸を作ります。
これを精製して不純物除いてきれいにしたあと、重合(乳酸をつなげること)などの化学的な方法を使ってポリ乳酸を作ります。
それぞれのバイオプラスチックの目的
「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」の、2つのバイオプラスチックについて説明をしました。
しかし、この2つのバイオプラスチックには似通っている特徴も多く、両方の特徴を持っているものもあります。
そのため「なんか、ややこしい!」と思う人がいても仕方ありません。
それぞれのバイオプラスチックの違いは、ずばり「作られる目的」にあります。
生分解性プラスチックの目的は「分解される」機能面
生分解性プラスチックの目的は、「自然界で分解され、プラスチックごみを出さない」という機能面にあります。
ちなみに、すべての生分解性プラスチックの原料は植物由来だけではありません。分解されるプラスチックは、石油由来のものもあります。
生分解性プラスチックは、分解されることを前提に作られています。
そのため、包装袋やストローなどの、私たちの生活の中でたくさん消費される、使い捨てのプラスチック製品や、農業用の資材にも多く使われています。
また、焼却しても熱量が低いので、焼却炉の負担が少ないことも特徴です。
例えば、バイオプラスチックのポリ乳酸とポリエチレンを比較すると、ポリ乳酸よりもポリエチレンの方が、焼却時の熱量や二酸化炭素の発生量が2倍ほど多いとされています(※1)
こういった理由で、生分解性プラスチックは廃棄物処理の合理化や、海に流れ込んでしまった海洋フラスチックごみを減らすことなどが期待されています。
バイオマスプラスチックの目的は「石油を使わない」資源面
バイオマスプラスチックは「石油ではなく、植物などの生物資源を原料にプラスチックを作る」ことが目的で生まれました。
そのため、石油を使わないことがバイオマスプラスチックを作る上での前提条件となります。
バイオマスプラスチックの原料は植物などの生物資源なので、貴重な資源である石油などの化石燃料を使いません。
また植物は、栽培中に光合成で二酸化炭素を吸収します。
ですから廃棄・焼却したときに二酸化炭素を出しても、二酸化炭素の量はプラスマイナスでゼロになります(こういった考え方を、カーボンニュートラルといいます)。
こういった理由で、温室効果ガス(二酸化炭素など)の排出抑制、石油など枯渇性資源の使用削減が期待されています。
バイオマスプラスチックの原料は植物などの生物資源ですが、自然に分解されることを目的に作られているわけではありません。
自然に分解されないバイオマスプラスチックもあります。生分解性プラスチックのように、自然に分解されることを目的にして作られているわけではないことに注意しましょう。
バイオマスプラスチックは、容器包装や繊維、電気・情報機器、自動車など多方面に使用されています。
バイオプラスチックの課題
いいことづくめに見えるバイオプラスチック。しかし、まだ課題やデメリットもあります。
プラスチック業界では、こうした課題を理解したうえで、それぞれに適した場所で、バイオプラスチックを有効に使っています。
生分解性プラスチックの課題
生分解性プラスチックは、製品としての強度は低く、いずれ分解されてしまうため、長期間使うような製品には向きません。
そのため、用途が限られるという課題(デメリット)があります。一般的なプラスチックよりも価格が高くなるという点も、課題でしょう。
置
かれている環境によっては微生物の種類や数が違うので、分解に時間がかかる場合もあります。
また、一般的なプラスチックごみをリサイクル品に再生するとき(マテリアルリサイクル)、生分解性プラスチック混入すると、リサイクルするときに品質が落ちるとされています。
そのため、マテリアルリサイクルには不向きです。
バイオマスプラスチックの課題
バイオマスプラスチックには、通常のプラスチック製品と比べると値段が高くなる、種類によっては耐久性や機能性が弱い、といった課題(デメリット)があります。
まとめ〜バイオプラスチックの未来
いくつかの課題(デメリット)もありますが、バイオプラスチックの普及は、プラスチックごみなどの環境問題を改善する大きな手助けになります。
環境問題の高まりを受けて、日本政府では2019年、プラスチック資源を守るための「プラスチック資源循環戦略」を策定しました。
また同年に開催された「G20大阪サミット」で、日本は2050年までに海洋プラスチックごみの追加汚染をゼロに減らすことを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を、各国の首脳と共有しました。
このビジョンの中で、今までのプラスチック製品から、バイオプラスチックなどの再生可能な製品への積極的な置きかえがよびかけられています。
プラスチック資源を守ったり、海洋プラスチックを減らすための対策として、バイオプラスチックはとても大きな存在といえます。こうした取り組みの中で、環境に優しいバイオプラスチックが注目されてきました。
国内のプラスチックメーカーでは、30年ほど前から、バイオプラスチックの研究・開発に取り組んできました。
そして2021年に発表された「バイオプラスチック導入ロードマップ」では、プラスチックのメーカーや、プラスチック製品を使うお店などに向けて、バイオプラスチックについての理解を深めてもらい、導入をうながしています。
欧州バイオプラスチック協会(EUBP)によれば、2021年の世界のバイオプラスチック製造能力は242万トンとなっています(※1)。
一方、日本では、2019年度のバイオプラスチックの出荷量は、4万7千トンでした(※2)。
今後、バイオプラスチックの製品は、私たちの周りにも大きく広がっていくことが期待されます。
私たちも、環境問題についてより深く考え、ものを大切に使ったり、リサイクルをしたりして、私たち一人ひとりが、環境のために何ができるのかを考えていきましょう。
※1)出典:European Bioplastics,nova-institute(2021)
※2)出典:日本バイオプラスチック協会
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