公開日:2022.12.27
更新日:2023.01.26
プラスチックの最小単位「モノマー」とは?わかりやすく解説します!
私たちの暮らしを豊かにしてくれる、便利なプラスチック。みなさんはプラスチックとはどんな成分でできていて、どんな製法で作られているのか知っていますか?
プラスチックの作り方を調べていると、必ず「モノマー」という言葉が登場してきます。モノマーとは、何のことなのでしょう。
モノマーは何からできていて、モノマーからプラスチックを作るにはどうしたらいいのでしょう。今回は、モノマーについてわかりやすく説明します。
モノマーってなんだろう?
ほとんどのプラスチックは、石油からとれる「ナフサ」という油を原料にしています。
ナフサは液体ですが、800℃度以上の高温の炉の中に送り込むと、「熱分解反応」という反応を起こします。
すると、気体の「エチレン」や「プロピレン」といった、プラスチックのもとになる石油化学基礎物質がつくられます。
モノマーは、一般的には水素と炭素がむすびついた低分子化合物です。簡単な構造をしているものが多いですが、複雑な構造をしているものもあります。また、モノマーの中には水素と結びついていないものもあります。
モノマーには「単一(1つ)」という意味があり、いわば、プラスチックの最小単位とでもいうものです。
例えば、エチレンの化学式は「C2H4」で、炭素2個を持つ炭化水素です。(上図・上を参照)。
モノマーがいくつも結合してプラスチックになる
モノマーが、何千個も何万個もつなぎ合わさると、ポリマーとよばれる物質になります。
「1つ」を意味するモノマーに対して、ポリマーは「たくさん」という意味があります。つまり、たくさんのモノマーがくり返しつながっているものが、ポリマーというわけです。
モノマーが結合してポリマーになることを専門用語で「重合」といいます。また、ポリマーのことを「重合体」ともいいます。
モノマーは、常温では気体や液体、固体のモノマーとさまざまな形状をしています。また、多くは刺激臭がしますが、エチレンのような甘いにおいがするものもあります。
ポリマーが重合してポリマーになると、多くは常温で固体になるので、プラスチック素材として安定します。(重合してもドロドロだったりするポリマーには、添加剤などを加えて安定させるなどする場合もあります)。
ポリマーは、製品にしやすいよう、ペレットという粒状の形に加工され、工場に出荷されます(写真)。
先ほど紹介した、化学式がC2H4のモノマーのエチレンは、重合してポリマーになると、「ポリエチレン」になります(上図・下を参照)。
また、モノマーのプロピレンが重合してポリマーになると、「ポリプロピレン」になります。
このように、ポリエチレンは「たくさんのエチレン」で、ポリプロピレンは「たくさんのプロピレン」という意味になるということがお分かりいただけたと思います。
エチレンからできるポリエチレン、プロピレンからできるポリプロピレンはどちらも、私たちの暮らしの中でたいへんよく目にするプラスチック素材です。
モノマーから生まれるプラスチック
さきほど説明したように、モノマーが何千個もつなぎ合わさる(重合する)と、プラスチック製品の原料になるポリマーができます。つまり、モノマーの種類ごとに、ポリマー(プラスチック)の種類も変わります。
代表的なモノマーとポリマー(プラスチック)は、このようになります。
モノマーの名前 | ポリマー(プラスチック)の名前 |
---|---|
エチレン | ポリエチレン(PE) |
プロピレン | ポリプロピレン(PP) |
塩化ビニル | ポリ塩化ビニル(PVC) |
スチレン | ポリスチレン(PS) |
エチレングリコールとテレフタル酸、またはエチレングリコールとテレフタル酸ジメチルが反応してできたもの | ポリエチレンテレフタレート(PET) |
なお、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルは、たいへん多く使われているので「4大汎用プラスチック」とよばれています。
この4大汎用プラスチックに加え、ポリエチレンテレフタレートの5つのプラスチックの特徴を紹介しましょう。
5つのプラスチックの特徴
(1)ポリエチレン(PE)
ポリエチレンは、エチレンというモノマーが重合してできたプラスチックです。
エチレンの化学式は「C2H4」で、炭素2個を持つ炭化水素です。
ポリエチレンは、柔軟性があり、使い勝手が非常にいいプラスチックです。
そのため、ポリプロピレンと並んで、世界でもっとも多く使われているプラスチック原料です。
「高密度ポリエチレン」と「低密度ポリエチレン」の2つの種類があり、それぞれに特徴があります。
ポリエチレンのおもな特徴とおもな用途
名前 | 高密度ポリエチレン | 低密度ポリエチレン |
---|---|---|
おもな特徴 | ・水に浮く ・燃えやすい ・水や薬品に強い(耐水性、耐薬品性) ・低密度ポリエチレンよりも熱に強い(耐熱温度は90~110℃ ・丈夫 ・白っぽく 不透明 | ・水に浮く ・水や薬品に強い(耐水性、耐薬品性) ・熱には強くない(耐熱温度は70~90℃) ・やわらかい ・低温でももろくならない |
おもな用途 | ・ 包装材 (フィルム、 袋 、食品 容器 など) ・シャンプー・リンス容器 ・バケツ ・ポリタンク ・コンテナやケース など | ・ポリ袋 ・ラップ ・農業用フィルム ・電線 被覆
など
|
(2)ポリプロピレン(PP)
ポリプロピレンは、プロピレンというモノマーが重合してできたプラスチックです。
プロピレンの化学式は「C3H6」です。
熱に強いなどメリットが多く、ポリエチレンと同様に、世界中でたいへん多く使われているプラスチック原料です。
ポリプロピレンのおもな特徴とおもな用途
名前 | ポリプロピレン |
---|---|
おもな特徴 | ・水に浮く( 比重 は0.9~0.91で、水より比重の小さいプラスチックの一つ) ・熱に強い(耐熱温度は100~140℃) ・丈夫
・色は半透明~不透明
|
おもな用途 | ・自動車部品 ・家電部品 ・包装フィルム ・食品容器やキャップ ・トレイやコンテナ、パレット ・ 繊維 ・ 医療器具 ・ごみ容器
など
|
(3)ポリスチレン(PS)
ポリスチレンは、スチレンというモノマーが重合してできたプラスチックです。スチロールともよばれます。
スチレンの化学式は「C8H8」です。
ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルとともに、代表的なプラスチック原料です。
ポリスチレンには、ポリスチレンをそのまま使った「汎用ポリスチレン」と、ポリスチレンにゴムをまぜて衝撃に強い「耐衝撃性ポリスチレン」、そして発泡成形されたおなじみの「発泡ポリスチレン(発泡スチロール)」があります。種類によって用途が違います。
ポリスチレンのおもな特徴とおもな用途
名前 | ポリスチレン | 発泡ポリスチレン |
---|---|---|
おもな特徴 | ・透明で 剛性 があるGP(汎用)グレードと、 乳 白色で耐衝撃性をもつHI(耐衝撃)グレードがある ・着色がしやすい
・水に
沈
む
| ・軽くて剛性がある ・断熱保温性に優れている ・水に浮く |
おもな用途 | ・OA機器やテレビのハウジング ・CDケース ・食品容器 など | ・ 梱包 緩衝材 ・魚箱(トロ箱) ・食品用トレイ ・カップめん容器 ・たたみの 芯
など
|
(4)ポリ塩化ビニル(PVC)
ポリ塩化ビニル(PVC)は、エチレンと塩素と空気から作られる、塩化ビニルというモノマーが重合してできたプラスチックです。「塩ビ」や「塩化ビニール」などとも呼ばれます。
塩化ビニルの化学式は「C2H3Cl」です。
本来は、非常に硬いプラスチックですが、添加剤をまぜると、やわらかさや透明度を自在に調節できます。
ポリ塩化ビニルには、硬い「硬質ポリ塩化ビニル」と可塑剤を混ぜてやわらかくした「軟質ポリ塩化ビニル」の2つの種類があります。
ポリ塩化ビニルのおもな特徴とおもな用途
名前 | ポリ塩化ビニル |
---|---|
おもな特徴 | ・燃えにくい ・添加剤を加えると、硬さや透明度を変えることができる ・水に沈む(比重1.4) ・薬品に強い
・表面につやがあり、
印刷
しやすい
|
おもな用途 | 硬質ポリ塩化ビニル ・上・下水道管 ・ 継手 ・雨どい ・下敷 ・クレジットカード など 軟質ポリ塩化ビニル ・農業用フィルム ・電線被覆 ・ホース
など
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5)ポリエチレンテレフタレート(PET)
ポリエチレンテレフタレートのモノマーは、エチレングリコールとテレフタル酸、またはエチレングリコールとテレフタル酸ジメチルが反応してできたものです。
エチレングリコールの化学式はC₂H₆O₂、テレフタル酸の化学式はC8H6O4、テレフタル酸ジメチルの化学式はC10H10O4となります。
ポリエチレンテレフタレートは英語の略称をPET(ペット)といいます。その名前のとおり、飲料容器のペットボトルの材料としておなじみです。
ポリエチレンテレフタレートには、「延伸(※1)フィルム」「無延伸シート」、そして「ペットボトル」と3つのタイプがあります。
(※1)延伸:温めながら引き伸ばすこと
ポリエチレンテレフタレート(PET)のおもな特徴とおもな用途
名前 | ポリエチレンテレフタレート |
---|---|
おもな特徴 | ・透明 ・強じん性がある ・ガスバリア性(気体を通さない)にすぐれている ・薬品に強い(耐薬品性) ・水に沈む |
おもな用途 | ペットボトル ・飲料やしょう油、酒 類 、お茶、飲料水などの容器(ペットボトル) など 延伸フィルム ・絶縁材料 ・磁気テープ ・写真フィルム ・包装フィルム など 無延伸シート ・食品容器 ・飲料カップ ・クリアホルダー ・透明包装
など
|
まとめ
プラスチックの原料は石油です。その石油の中からナフサという油が取り出され、さらにナフサからモノマーというプラスチックの原料が作られることを学びました。
このモノマーから、さまざまな種類のプラスチックが生まれ、その特性にあったプラスチック製品が作られています。
これからプラスチック製品を使うとき、モノマーのことも思い出してくださいね。
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