公開日:2023.02.17
更新日:2024.10.31
ポリプロピレンってどんなプラスチック?やさしく解説!
私たちの暮らしを豊かにしてくれるプラスチック。私たちの回りには、数えきれないほどのプラスチック製品があります。
プラスチックにはさまざまな種類がありますが、代表的なプラスチックはおよそ100種類あるとされています。
また、そのうち私たちの身の回りで広く使われているプラスチックにしぼると、その数は30種類ほどあるとされています。
この記事では、非常に多く使われている「ポリプロピレン」というプラスチックにスポットライトを当て、その特徴や、どんな製品に使われているのかを説明します。
この記事を読んで、ポリプロピレンへの理解を深めてください!
ポリプロピレンってどんなプラスチック?
プラスチックの一種であるポリプロピレン。英語では「polypropylene」と書きます。そのため、「PP」と略して表記されることもあります。
ポリプロピレンは、1954年に開発されました。その後、プラスチック製品の原料として使用範囲が広いことから、普及が大きく広がりました。
まずは、ポリプロピレンとはどんなプラスチックなのかを簡単に説明します。
ポリプロピレンの構造
最初に、ポリプロピレンの構造を知りましょう。
プラスチックの構造を知るとき、かならず出てくるのが「モノマー」という物質です。
モノマーとは、プラスチックを構成している最小の基本物質で、「単量体」ともいいます。
モノマーはプラスチックの種類ごとに異なりますが、ほとんどのモノマーは、水素と炭素が結びついた、簡単な構造をしている低分子化合物(少ない分子で結びついている化合物)です(例外もあります)。
そのモノマーが、いくつも重なり合うことで、高分子化合物(たくさんの分子が結びついている化合物)ができあがります。これをポリマーといいます。このポリマーが、プラスチックの本体となります。
ちなみに、モノマーがいくつも重なり合うことを「重合」といい、ポリマーはモノマーに対して「重合体」ともよばれます。
ポリプロピレンのモノマーは「プロピレン」という物質で、これがポリプロピレンの基礎原料となります。つまり、モノマーのプロピレンが重合してできたポリマーが、ポリプロピレンというわけです。
ポリプロピレンの化学式と構造式
プロピレンの化学式は「C3H6」で、炭素3個を持つ炭化水素です。
ポリプロピレンは、プロピレンの重合体で、「(C3H6)n」という化学式で表されます。
そして構造式は、このように表されます。
日本でいちばん作られているプラスチックはポリプロピレン!
私たちの身の回りで広く使われているプラスチックは30種類ほどあります。
その中でも、特に使われているのが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルの4種類で、「4大汎用プラスチック」とよばれています。
この4大汎用プラスチックの中でも、もっとも多く生産されているプラスチックが、ポリプロピレンです。
日本におけるプラスチック原材料の生産実績のデータから見てみましょう。
2023年、日本国内で887万トンのプラスチック原材料が生産されました。そのうちポリプロピレンの生産量は208万トンとなっています。
日本で作られるすべてのプラスチックのうち、実に約4分の1はポリプロピレンがしめているのです。
日本プラスチック工業連盟 統計資料 を参考に作成
ポリプロピレンの原料や作り方
ここでは、ポリプロピレンの原料や作り方について説明します。
プラスチックの原料は「ナフサ」
ほとんどのプラスチックは(バイオマスプラスチックなど一部の例外を除いて)、石油からできています。
地下から掘り出されたままの石油は「原油」とよばれ、真っ黒でドロドロとした液体です。
この原油を、精製プラントで加熱・蒸留すると、蒸気になります。その蒸気を冷やしていくと、ガソリンや灯油、軽油といった、さまざまな成分の油に分離されます。
その一つが「ナフサ」という油です。このナフサが、プラスチックの原料となります。
ポリプロピレンの作り方
ナフサは液体ですが、800℃以上の高温の炉の中に送りこむと、「熱分解反応」という反応を起こします。
すると、「エチレン」や「プロピレン」などのモノマーが作られます。
そして、ナフサからできたエチレンに、触媒(化学反応をすすめる物質)をまぜて、高温・高圧で化学反応させると、プロピレンが重合して、ポリプロピレンができあがるのです。
ポリプロピレンにはどんな特徴があるの?
ポリプロピレンのいちばんの特徴は、その丈夫さにあります。変形や破壊に耐えられる強度(機械的強度)が高く、しかも加工しやすいので、自動車部品から医療器具まで、たいへん幅広い分野で使われています。
常用(短時間たえる温度)の耐熱温度は100~140℃、融点(溶けて液体になる温度)は168℃と、一般的に使われるプラスチックの中では、もっとも耐熱性があります。
比重も0.9~0.91と、水よりも比重の小さいプラスチックの一つで、水に浮かびます。
ポリプロピレンのおもな特徴は以下のとおりです。
ポリプロピレンのおもな特徴
名前 | ポリプロピレン |
---|---|
おもな特徴 | ・水に浮く(比重は0.9~0.91で、水より比重の小さいプラスチックの一つ) ・熱に強い(耐熱温度は100~140℃) ・丈夫(機械的強度が高い) ・色は半透明~不透明 |
ポリプロピレンにはどんな製品に使われている?
プラスチック成形には、溶かしたプラスチックを金型に入れて固める射出成形や、溶かしたプラスチックを型から押し出して成形する押出成形、溶かしたプラスチックを風船のように広げて成形するブロー成形など、さまざまな成形方法があります。
ポリプロピレンはこういった成形方法に対応でき、たいへん加工しやすいプラスチックです。
そのため、自動車部品や家電製品をはじめ、食品容器などの各種ケース、繊維、医療器具、書類をまとめるファイルボックス、バッグ(袋)など、多方面のプラスチック製品でポリプロピレンが使われています。
プラスチックは、一つの製品の中でも、部品ごとに使い分けられていることも少なくありません。
たとえば食品の保存容器には、本体にポリプロピレン、ふたにポリエチレンが使われていることがあります。
本体にはかたくて熱に強いポリプロピレンが素材として適していて、ふたにはやわらかいポリエチレンが適しているのです。
電子レンジにかけるときは、本体のポリプロピレンは耐熱性が高いので、大丈夫です。
しかし、ふたが耐熱性の低いポリエチレンの場合もあるので、容器の注意書きをよく読んで使いましょう。
ポリプロピレンが使われているおもな製品
名前 | ポリプロピレン |
---|---|
おもな製品 | ・自動車部品 ・家電部品 ・包装フィルム(食パンの袋など) ・食品容器やキャップ ・ケース ・トレイやコンテナ、パレット ・繊維(カーペットやマスクなど) ・医療器具 ・ごみ容器 ・ファイルボックス ・バッグ など |
ポリプロピレンのリサイクル
プラスチックは、限りある資源である石油から作られています。また、プラスチックは自然界で分解されず、ゴミとして自然界に出てしまうと、環境破壊につながります。
使い終わったプラスチックを、資源として再利用することは、私たちの未来の暮らしを守るために非常に大切なことです。
プラスチックのリサイクルの現状
廃プラスチックの中のポリプロピレンの割合
2022年の国内の廃プラスチック排出量は、823万トンでした。
このうち、ポリプロピレンは197万トンをしめています。これは、廃プラスチックの約24%にのぼります。
廃プラスチックは3つの方法でリサイクルされる
廃プラスチックのリサイクル方法は、新しいプラスチック製品(再生品)の原料として利用される「マテリアルリサイクル」、化学技術によって製品の原料にしたり炉の燃料に変える「ケミカルリサイクル」、そしてマテリアルリサイクルもケミカルリサイクルもできないプラスチックを燃やして熱エネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」の3種類があります。
廃プラスチックの有効利用率(3つのリサイクルの合計)は、2022年で87%となっています。
ポリプロピレンとマテリアルリサイクル
上の図からもわかるとおり、2022年に排出された廃プラスチックのうち、180万トンがマテリアルリサイクルされました。
その内訳を見てみると、もっとも多くマテリアルリサイクルされているのは指定ペットボトル用のポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)で、53万トン(約30%)です。
ポリプロピレンは、PET樹脂に次ぐ36万トン(約20%)がマテリアルリサイクルされています。
リサイクルで私たちにできること
プラスチックのリサイクルは、リサイクル業者の人たちが行うことで、私たちは直接、プラスチックのリサイクルをすることはできません。
しかし、リサイクルの手助けをすることはできます。それは、使い終わったプラスチックは、住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
リサイクルされたプラスチックは、さまざまな形で、また私たちの役に立ってくれます。
廃プラスチックの分別は「識別マーク」を参考に
ポリプロピレンは、さまざまなプラスチック製品で使われています。そのため必ずしも、すべてのポリプロピレン製品が資源としてリサイクルできるわけではありません。
リサイクルできるプラスチック製品には、容器包装リサイクル法にのっとって、識別マークがついています。
代表的な識別マークは、ペットボトルの「PET」、ペットボトルを除くプラスチック製容器包装の「プラ」です。
リサイクルできるポリエチレンのプラスチック製品には、「プラ」の識別マークがあります。
この識別マークが付いているときは、プラスチック製容器包装としてごみ分別し、資源として出しましょう。
ちなみに、100%ポリプロピレンでできているプラスチック製品には、「プラ」の識別マークの下に小さく「PP」と記入されていることがあります。
写真のプラスチック製品では、ボトル本体やキャップ、中栓がポリエチレン(PE)、ラベルがポリプロピレン(PP)でできていることがわかります。
そして「プラ」の識別マークがついているので、プラスチック製容器包装として資源で出すことができます。
ごみや資源の分別ルールは、住んでいるまちによって異なります。
廃プラスチックをごみや資源として分別するときは、まち出されている「家庭ごみ・資源の分別早見表」などを見て、キチンと確認するようにしましょう。
まとめ
今回は、プラスチックの中でもっとも使われているポリプロピレンについて学びました。
ポリプロピレンは、私たちが普段、何気なく言葉に出している「ポリ袋」のポリエチレンや「発泡スチロール」のポリスチレンよりも、言葉としてなじみが薄いかもしれません。
ポリプロピレンをはじめとしたプラスチックが、私たちの暮らしを便利にしてくれていることを、この記事で知っていただけるとうれしいです。
そして、プラスチック製品は大切に使い、使い終わったものは住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
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