公開日:2023.03.24
更新日:2024.10.09
フッ素樹脂ってどんなプラスチック?やさしく解説!
私たちの暮らしを豊かにしてくれるプラスチック。私たちの回りには、数えきれないほどのプラスチック製品があります。
プラスチックにはさまざまな種類がありますが、代表的なプラスチックはおよそ100種類あるとされています。
また、そのうち私たちの身の回りで広く使われているプラスチックにしぼると、その数は30種類ほどあるとされています。
この記事では、フライパンの表面をコーティングする素材など、特殊な役割で使われることが多い「フッ素樹脂」というプラスチックにスポットライトを当て、その特徴や、どんな製品に使われているのかを説明します。
この記事を読んで、フッ素樹脂への理解を深めてください!
フッ素樹脂ってどんなプラスチック?
フッ素樹脂はプラスチックの一種です。その名前のとおり、フッ素という元素を含んでいるプラスチックを「フッ素樹脂」といいます。
フッ素樹脂は1つではなく、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)など9つの種類があります。
フッ素樹脂が発明されたのは1938年のことです。熱に強い(耐熱性)、寒さに強い(耐寒性)、よくすべる、薬品に強い、電気を通さないなどさまざまな特徴があり、その特徴を利用して、私たちのまわりのさまざまな製品に使われています。
フッ素樹脂の構造
最初に、フッ素樹脂の構造を知りましょう。
プラスチックの構造を知るとき、かならず出てくるのが「モノマー」という物質です。
モノマーとは、プラスチックを構成している最小の基本物質で、「単量体」ともいいます。
モノマーはプラスチックの種類ごとに異なりますが、ほとんどのモノマーは、水素と炭素が結びついた、簡単な構造をしている低分子化合物(少ない分子で結びついている化合物)です。
ただしフッ素樹脂のモノマーはフッ素と結びついた炭素が含まれています。
そのモノマーが、いくつも重なり合うことで、高分子化合物(たくさんの分子が結びついている化合物)ができあがります。
これをポリマーといいます。このポリマーが、プラスチックの本体となります。
ちなみに、モノマーがいくつも重なり合うことを「重合」といい、ポリマーはモノマーに対して「重合体」ともよばれます。
フッ素樹脂には9つの種類がありますが、モノマーに含まれるフッ素の数と重合方法の違いで性質が大きく変わります。
ここでは、その中でも代表的なフッ素樹脂である「PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)」について説明します。
ポリテトラフルオロエチレンのモノマーは「テトラフルオロエチレン」という物質で、これがポリテトラフルオロエチレンの基礎原料となります。
つまり、モノマーのテトラフルオロエチレンが重合してできたポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンというわけです。
ポリテトラフルオロエチレンの化学式と構造式
テトラフルオロエチレンの化学式は「C2F4」で、炭素2個とフッ素4個を持っています。
ポリテトラフルオロエチレンは、テトラフルオロエチレンの重合体で、「(C2F4)n」という化学式で表されます。
そして構造式は、このように表されます。
ちなみに、この構造式のフッ素(F)を水素(H)に置き換えると、ポリエチレンになります。
フッ素樹脂の年間生産量は3万トン
私たちの身の回りで広く使われているプラスチックは30種類ほどあります。
その中でも、特に使われているのが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルの4種類で、「4大汎用プラスチック」とよばれています。
日本におけるプラスチック原材料の生産実績のデータから見てみましょう。
2023年、日本国内で887万トンのプラスチック原材料が生産されました。そのうちフッ素樹脂の生産量は3万トンとなっています(※1)。
プラスチック全体の生産量からすると、わずか0.4パーセント程度ですが、フッ素樹脂は産業機械などの材料として、なくてはならないものです。
日本プラスチック工業連盟 統計資料 を参考に作成
フッ素樹脂の原料や作り方
ここでは、フッ素樹脂の原料や作り方について説明します。
フッ素樹脂の原料は「蛍石」という鉱石
ほとんどのプラスチックは石油からできています。
しかしフッ素樹脂は例外で、「蛍石」という鉱石を原料にして作られます。
蛍石は紫色や透明の色をしている鉱石ですが、ブラックライトを当てると光るという特徴があります。まさにホタルですね。
では、蛍石からどのようにフッ素樹脂を作るのかを、簡単に説明しましょう。
まず、蛍石に硫酸を加えるなどして、フッ化水素(HF)を作ります。
次に、クロロホルム(CHCl3)と触媒(化学反応を助ける薬品)を加えて、クロロジフルオロメタン(CHClF2)を作り、加熱すると、ポリテトラフルオロエチレンのモノマーであるテトラフルオロエチレン(C2F4)が作られます。
そして、テトラフルオロエチレンを化学反応で重合させると、ポリテトラフルオロエチレンができあがります。
ここでは、フッ素樹脂の一つであるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)について説明しました。他の種類のフッ素樹脂も、蛍石からさまざまな方法で作られています。
フッ素樹脂にはどんな特徴があるの?
フッ素樹脂は、種類によって多少の違いはありますが、熱に強い(耐熱性)、寒さに強い(耐寒性)、よくすべる(すべり性)、すり減りに強い(耐摩耗性)、薬品に強い(耐薬品性)、電気を通しにくい(絶縁性)など、共通している幅広い特性があります。なお透明性はありません。
こういった特性を利用して、過酷な環境や、工作機械などの特殊な分野に、さまざまな形で使用されています。
私たちのもっとも身近な場で使われているフッ素樹脂は、フライパンのコーティングでしょう。フライパンを使うときの悩みは、油をひいても料理がこびりついてしまうことが多い点です。
フッ素樹脂を塗れば、料理がくっつかず、調理がしやすくなります。しかも熱や摩擦にも強いので、高温で炒め調理することが多いフライパンにはうってつけです。
私たちがよく耳にするフライパンのコーティング材「テフロン」は、ポリテトラフルオロエチレンの商品名(ケマーズ社)です。
フッ素樹脂にもデメリットがあります。
くっつかない、よくすべるという特徴は、逆にいえば成形するのが難しい素材だともいえます。そのため、高い技術がないと成形しにくいことから、値段も高めになります。
また、たたいたりこすったりすると、はがれたり、キズが目立ちやすくなるなど衝撃に弱いこともデメリットです。フライパンを乱暴に扱うと「テフロンがはがれる」のは、そのためです。
フッ素樹脂のおもな特徴
主な特徴 | デメリット | おもな用途 |
---|---|---|
・耐熱性(熱に強い)。常用 耐熱温度は260℃ ・耐寒性(寒さに強い) ・非粘着性(くっつかない) ・すべり性(よくすべる) ・耐摩擦性(すり減りに強い) ・耐薬品性(薬品に強い) ・絶縁性(電気を通しにくい) ・耐候性(たいこうせい)(天候(てんこう)の変化に強い) | ・成形が難しい ・値段が高い ・衝撃に弱い ・透明性はない | ・フライパン内面コーティング ・絶縁(ぜつえん)材料 ・軸受(じくうけ) ・ガスケット ・各種(かくしゅ)パッキン ・フィルター ・半導体(はんどうたい)工業分野 ・電線被覆(でんせんひふく) |
フッ素樹脂のリサイクル
多くのプラスチックは、限りある資源である石油から作られています。また、プラスチックは自然界で分解されず、ゴミとして自然界に出てしまうと、環境破壊につながります。
フッ素樹脂は蛍石をもとに作られるため、おもな原料が石油ではない珍しいプラスチックです。
それでも、ルールを守らずに不法投棄されたりしてごみになり、自然界に出てしまうと、環境破壊につながることは変わりません。
使い終わったプラスチックを、資源として再利用することは、私たちの未来の暮らしを守るために非常に大切なことです。
廃プラスチックの分別は「識別マーク」を参考に
リサイクルできるプラスチック製品には、容器包装リサイクル法にのっとって、識別マークがついています。
代表的な識別マークは、ペットボトルの「PET」、ペットボトルを除くプラスチック製容器包装の「プラ」です。
リサイクルできるポリエチレンのプラスチック製品には、「プラ」の識別マークがあります。
この識別マークが付いているときは、プラスチック製容器包装としてごみ分別し、資源として出しましょう。
写真のプラスチック製品では、ボトル本体やキャップ、中栓がポリエチレン(PE)、ラベルがポリプロピレン(PP)でできていることがわかります。
そして「プラ」の識別マークがついているので、プラスチック製容器包装として資源で出すことができます。
ごみや資源の分別ルールは、住んでいるまちによって異なります。廃プラスチックをごみや資源として分別するときは、まちで出されている「家庭ごみ・資源の分別早見表」などを見て、キチンと確認するようにしましょう。
フッ素樹脂は、ポリエチレンやペットボトルなどのように、広く使われているわけではありません。むしろ、特殊な用途に使われているプラスチックです。
そのため、フッ素樹脂で分別ルールを考えるよりも、フライパンやフィルターなど、フッ素樹脂を使った製品を目安に分別しましょう。
例えばフライパンの場合、多くの自治体では「資源ごみ」として回収されます。また、サイズの大きなフライパンは「粗大ゴミ」に指定されていることもあります。
まとめ
今回は、フッ素樹脂というプラスチックについて学びました。私たちが普段使っているフライパンがなぜこびりつかないのは、フッ素樹脂のコーティングによるものかもしれません。
このようにフッ素樹脂は、目立たなくても私たちの快適な生活を、陰で支えてくれています。
フッ素樹脂をはじめとしたプラスチックが、私たちの暮らしを便利にしてくれていることを、この記事で知っていただけるとうれしいです。
そして、プラスチック製品は大切に使い、使い終わったものは住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
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