公開日:2025.02.13
更新日:2025.02.19
プラスチックと紙

プラスチックで作られた紙とそっくりの合成紙
プラスチックで作られた材料の1つに合成紙があります。合成紙は水を弾き、破れにくいので、選挙の投票用紙やポスター、飲食店のメニュー表、車両の窓に貼るステッカーなどに使われています。
合成紙は、ポリプロピレン(PP)などのプラスチックと天然鉱物を混ぜて薄く伸ばして作る、紙より強い紙です。PPはプラスチックのなかでも軽く、酸やアルカリなどの薬品に強く傷が付きにくいのが特長です。PPなどを使った合成紙は水や汚れに強く、丈夫です。
鉛筆やボールペンなど、いろいろな筆記用具を使って文字が書けるほか、おり曲げてもすぐに開く、枚数を数える機械にかけても破れにくいなどの特長を持つため、選挙の投票用紙としても使われています。紙やプラスチックと同じにきれいな印刷ができるので、選挙ポスターや野外広告にも利用されています。
ポリマー紙幣
プラスチックはお札にも使われます。ポリマー紙幣といいます。1988年オーストラリアで発行されたのが始まりです。
ポリマー紙幣の長所は、偽札防止のための透かしやホログラムを入れることができることです。破れにくい、作る費用が安いという利点もあります。現在オーストラリアのほか、カナダ、シンガポール、タイなど世界20ケ国以上でポリマー紙幣が使われています。
日本の紙幣は和紙に使われる「みつまた」とマニラ麻とも呼ばれる「アバカ」などでできています。

カナダ銀行が発行したポリマー紙幣(5ドル札)
プラスチックと紙で作られる牛乳パック
スーパーマーケットなどで買う牛乳パックは厚紙でできていますが、紙だけだと牛乳が浸みだすので、厚紙の両面に低密度ポリエチレン(LDPE)というプラスチックのフィルムを貼りあわせて(ラミネートして)います。これは水にふやけて柔らかくなってしまうという紙の弱点を補うためです。
果物のジュースが入っている紙パックや乳飲料が入っている紙パックも牛乳パックと同じです。
牛乳パックの特長
牛乳パックの特長は、安全で衛生的、印刷して消費期限などの情報を消費者に伝えられる、ガラスの瓶と比べて軽いため運ぶときのエネルギーを節約できる、落としても破れにくいなどがあげられます。デザインや容量が自由に選べる、紙の部分をリサイクルできるなどの利点もあり、ガラス瓶と比べて広く普及しています。

プラスチックと紙の環境性
合成紙は環境に良い?悪い?
紙は、たくさんの木材と水を使って作りますが、合成紙は木材を使わず、紙の10分の1の水で作ることできます。合成紙は森林を保護することにも役立っているのです。
現在、多くの国が地球温暖化の原因とされる二酸化炭素などの温室効果ガス (Greenhouse Gas=GHG) の排出削減に取り組んでいます。日本では、2050年に社会をカーボンニュートラル(植物などによる二酸化炭素の吸収量と生活・産業活動による二酸化炭素の排出量が同じ)にすることが宣言され、政府や会社が色々な取り組みをすすめています。
紙と合成紙の二酸化炭素の吸収と排出を比べましょう。
紙の原料は、木材の皮をむき、細かく砕いて作ったパルプです。木材は成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収するため、燃やしてもカーボンニュートラルです。一方、合成紙に使われているプラスチックのポリプロピレンは、地中から掘った石油を原料としているため、燃やすと大気中の二酸化炭素の量が増えます。そのため、最近は石油ではなく、植物を原料とした、カーボンニュートラルなバイオプラスチックをまぜた合成紙も登場しています。
牛乳パックのリサイクル
プラスチックがラミネートされた紙パックは、古紙回収に混ぜてはいけないとされ、燃えるごみとして焼却されていました。1980年代からリサイクルへの取り組みが始まり、回収・リサイクルされています。紙パックとは牛乳、乳飲料、ジュースなどの容器で内側にアルミニウムがラミネートされていないものをいいます。洗い、平らに切り開いて乾かし、スーパーマーケットや自治体の回収に出します。再生紙メーカーが、プラスチックのラミネート部分を取り除き、厚紙の部分を溶かしてトイレットペーパーなどの製品にリサイクルします。取り除いたラミネート部分は燃料等に使われています。
「洗う、開く、乾かす」という手間がかかるので、紙パックの回収比率は2022年で39%と古紙の回収の80%に比べると低い水準にとどまっています。

紙のリサイクル
紙は、1970年代からリサイクルへの取り組みが強化されています。森林資源保護が目的です。市役所など自治体が行う資源ごみの回収の主なものは紙類です。2022年の日本の古紙回収率は80%、イギリスの92%、韓国の88%に次いで世界第3位でよその国と比べると高いです。一方、古紙の利用率は67%で、輸出もされています。
合成紙のリサイクル
合成紙のなかでも大量に使われる投票用紙は、保管後、細かく砕き、熱で溶かしてペレットにし、さらに熱で溶かして、輸送用パレットや建築資材などにリサイクルされています。これをマテリアルリサイクルといいます。
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