公開日:2022.12.07
更新日:2024.09.25
対策が急がれる海洋プラスチック問題。私たちにできることは?
私たちの生活には、プラスチック製品があふれています。
コストや加工面で非常に優秀なプラスチック素材ですが、その一方で、不法投棄やポイ捨てなどで廃棄されたプラスチックごみが、環境破壊の原因の一つになっているといわれています。
特に問題になっているのが「海洋プラスチック問題」。海に廃棄されたプラスチックごみが、さまざまな海の環境を悪化させている原因とされています。
この記事では、海洋プラスチック問題とはなにか、具体的にどのような問題が起こっているかを紹介します。
また、海洋プラスチック問題についてのSDGsや日本の取り組み、私たちができる海洋プラスチック問題の対策についても説明します。
「海洋プラスチック問題」とは?
海に不法投棄やポイ捨てされたプラスチックごみを「海洋プラスチックごみ」といいます。
海岸や船の上から不法投棄で捨てられたり、排水溝や川などから海に流れこんでくるなど、さまざまな経路でプラスチックごみは海にやってきます。
海洋プラスチックごみは年々増え続けていて、海の環境破壊を進める原因の一つとして大きな問題になっています。
化学物質のプラスチックは、劣化して粉々に砕けたとしても、自然に分解されることはありません。
海洋プラスチックごみは、海の中にたまっていきます。
世界の海にはいま、すでに1億5,000万トンのプラスチックごみがたまっているといわれています。
そこに、少なくとも毎年800万トンのプラスチックごみが流入し続けているともいわれています。
さらに、このペースで海にプラスチックごみの流入が続けば、2050年には、海の魚の量よりも、海洋プラスチックごみの方が多くなるともいわれているのです(※1)。
海洋プラスチック問題は、それほど深刻な問題なのです。
海洋プラスチック問題が深刻な理由
海洋プラスチックには、どのような問題があるのかを4点にわけて説明します。
海洋プラスチック問題(1)海の環境破壊は見えにくい
海の表面積は、約3億6,000万平方キロメートルあります。地球全体の表面積は、約5億1,000万平方キロメートルなので、地球の表面積の約70%は、海がしめています。
つまり海の環境破壊が進んでいるということは、地球全体の環境破壊が進んでいるのと同じ意味になるのです。
ごみは、海中に沈んでしまうと、存在が隠れてしまいます。海岸に流れ着いているごみは目で見えますが、海に目を向けても、ごみによって環境破壊が進んでいるようには見えません。
この「見えにくさ」が、問題の深刻さを隠してしまっています。
海洋プラスチック問題(2)マイクロプラスチック
海洋プラスチックの中でも、特に問題になっているのが、マイクロプラスチックというごみの存在です。
マイクロプラスチックは、5ミリ以下の大きさしかない、粒状のプラスチック片のことです。
マイクロプラスチックには、最初から小さな粒のような形で作られた「一次的マイクロプラスチック」と、自然環境の中で劣化が進んで粒状になった「二次的マイクロプラスチック」の、2つの種類があります。
不法投棄やポイ捨てされたプラスチックは、紫外線、風雨以外に河川で流れるときや海の波の力でも劣化し、ボロボロになります。
そして次第に砕かれて、細かなプラスチックの粒子になります。これが二次的マイクロプラスチックです。
最初から細かい粒子のような一次的マイクロプラスチックはもちろん、陸地に捨てられたプラスチックのごみも、砕けて二次的マイクロプラスチックになると、雨や川を通じて、最終的に海に流れ込みます。
マイクロプラスチックは非常に小さいため、いちど海に広がってしまったら、回収することはほとんど不可能です。
(※1)出典:環境省 洗顔料や歯磨きに含まれるマイクロプラスチック問題(大妻女子大学 兼廣春之)
(※2)出典:環境省 プラスチックを取り巻く国内外の状況<参考資料集>
海洋プラスチック問題(3)海の生態系を乱す
海のごみが増えると、水質が悪くなって海の生き物が住みづらくなります。
また、ごみをエサと間違えて食べてしまうと、ごみが内蔵を傷つけたり、管を詰まらせたりして、死んでしまう場合があります。
海洋プラスチックごみが増えると、海の生態系を乱れるおそれがあります。
海洋プラスチック問題(4)水産業への悪影響
海の環境破壊がこのまま続くと、魚介類の数が減少し、水産業が打撃を受ける可能性があります。
また同様に、きれいな海が汚染されると、海の観光業にも悪影響がおよびます。経済的な損失をこうむる国や地域が出てくる可能性もあります。
海洋プラスチック問題とSDGs
SDGsは、「Sustainable DevelopmentGoals」という英語の頭文字をとった言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」という意味をもつ、世界で共通の目標です。
世界で起こっているさまざまな問題を、2030年までに解決・改善し、地球を未来につないでいくために必要な目標を、17の項目に分けて取り上げています。
SDGsの17の目標の中で、14番目に掲げられているのが「海の豊かさを守る」という目標です。
SDGsの取り組みが進むことで、海洋プラスチック問題も解決に向かうことが期待されています。
「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」
海に囲まれた島国の日本にとって、海洋プラスチック問題は、非常に身近な問題といえます。
それどころか日本は、海洋プラスチック問題に対して責任がある立場でもあります。
2010年の推計値によると、海洋プラスチックごみの年間流出量において、日本は海に面する192の国・地域の中で30位にランキングしています。(※1)。
(※1)出典:環境省 海洋プラスチックごみに関する状況
日本では、2018年に海岸漂着物処理推進法が施工されました。また2019年、「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」が策定され、海洋プラスチック問題への取り組みが本格的にスタートしています。
アクションプランでは、プラスチックの有効利用を前提とし、「新たな汚染(おせん)を生み出さない世界」を目指すとしています。
対策と取り組みは、以下の6つです。
対策分野 | 主な対策・取り組み |
---|---|
(1)廃棄物回収・適正処理 (海のごみを回収し、正しく処理する) | 国内の廃プラスチック処理・リサイクル施設の整備を支援 (国内にあるプラスチックごみの処理工場やリサイクル工場の整備を支援する) |
(2)ポイ捨て、流出防止 (ゴミのポイ捨てや、ゴミが海に流れ出ることを防ぐ) | 専用リサイクルボックスの設置、漁具の流出防止 (プラスチックごみの専用リサイクルボックスを設置する。網など漁業の用具を海に捨てない) |
(3)陸域でのごみ回収 (海岸などでごみを回収する) | 「海ごみゼロウィーク」など全国一斉清掃アクションを展開 (海岸の清掃イベントなどを全国で開催(かいさい)) |
(4)流出ごみの回収 (海のごみの回収) | 海岸漂着物等の回収・処理を支援、海洋ごみの回収・処理を支援 (海から海岸に流れついたごみ、海のごみの回収・処理を支援する) |
(5)イノベーション (新しい技術の開発など) | 技術開発、代替素材の生産設備の整備・技術実証を支援 (海の環境を守る新しい技術の開発、新しい設備の整備などを支援する) |
(6)国際貢献・実態把握 (国際的な海の環境問題に貢献する、海の環境の実態(じったい)を調べる | 廃棄物管理に関する能力構築を支援、漂着物・浮遊プラスチック類の調査等 (廃棄物の管理支援や、海のごみに関する調査に取り組み、国際的な海のごみ問題に取り組む) |
海洋プラスチック問題で私たちができること
海のごみの8割は陸地からやってくる!
海洋プラスチック問題の深刻さがわかっても「でも、海のごみだから、私たちにはあまり関係ない」と思っている人はいませんか?それはとんでもないことです。
なぜなら、海洋ごみの約8割は、陸地から流れてきたものといわれているからです。
私たちが何気なくポイ捨てをした、ペットボトルやレジ袋などのプラスチックごみが、排水溝や川を経由して海に流れこみ、海洋汚染を引き起こしているかもしれないのです。
なかでも、問題になっているのが、海に流れたプラスチックごみが、海中で砕けてマイクロプラスチックになるケースです。
また最近では、人工芝や畑の肥料カプセルなどが、川に流れ出る前にマイクロプラスチックになり、海にたどり着く場合もあります。
海洋プラスチック問題は、町に住んでいる人ほど「私たちにできることはなに?」と、意識を持つことが大切なのです。
まずは、絶対にごみのポイ捨てや不法投棄をしないことです。リサイクルすれば資源になるプラスチックごみも、ポイ捨てをすれば海を汚すごみになってしまいます。
そして、使ったあとのプラスチック資源ごみは、住んでいる町の分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
リサイクル専門の会社によってリサイクルされたプラスチックは、さまざまな形で、また私たちの役に立ってくれます。
まとめ
海洋プラスチックは、その8割が陸地から出ています。そう聞いて、驚いた人も多いのではないでしょうか。
海洋プラスチック問題は、海や海に近いところに住む人だけの問題ではありません。
この地球に住む人がすべて、自分の問題として考え、「私たちにできることは何か」と取り組みを始めることが大切なのです。
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