公開日:2022.12.07
更新日:2022.12.21
海の豊かさを守るために、小学生のみなさんにわかりやすく解説!
さまざまな環境問題が叫ばれていますが、その中でも海洋汚染の問題が深刻になっています。
海が汚染されると、海の生きものの生態系が乱れたり、海にかかわる仕事ができなくなるなど、私たちの生活にも大きな影響がおよびます。
海の豊かさを守ることは、私たちの未来を守ることにつながるのです。
いま、海の環境はどうなっているのか。海の豊かさを守るためには、どんな解決策があり、どんな行動が必要なのか。
SDGsの目標もふまえ、小学生でもできるSDGsの取り組みについても解説します。
「海の豊かさを守ろう」はSDGsの目標のひとつ
地球の表面積は、約5億1,000万平方キロメートルあります。その中で、海の表面積は約3億6,000万平方キロメートルをしめています。
つまり地球の表面積の70%は、海なのです。ですから、海が汚れるということは地球が汚れるということです。
「海の豊かさを守ろう」といっても、具体的に何をすればいいのでしょうか。
実は、「海の豊かさを守ろう」は、SDGsの目標のひとつとなっています。
小学生のみなさんの中には「SDGsって、ニュースで聞いたことはあるけど、よくわからない。何なんだろう?」と思っている人もいるかと思います。
まず、SDGs という言葉を説明しましょう。
SDGsは、正式には「SustainableDevelopmentGoals」といいます。
この英語の頭文字をとって、日本語で「エス・ディー・ジー・ズ」とよばれています。
その意味は、ストレートに日本語でいえば「持続可能な開発目標」と、なります。
でも、まだよくわかりませんね。もう少し、ていねいに説明しましょう。
私たちは、地球の上で生きています。地球の環境が汚れたり、資源がなくなったりすると、生きていけなくなってしまいます。
しかしこの地球上には、地球が汚れてしまう環境問題をはじめ、世界の人が生きづらくなる貧困や差別の問題など、解決しなければいけない課題を抱えています。
こういった問題が解決しないと、私たち人間は、そのうち地球上で生きることができなくなってしまうわけです。
SDGsは、こういった問題を一つひとつ解決・改善し、世界のすべての人が取り残されず、人間らしく暮らし続けていけることをめざしています。
SDGsは、2015年に、150をこえる国や地域の首脳が参加して開催された「国連持続可能な開発サミット」で決められました。
SDGsは、2016年から2030年の15年間で、問題を解決・改善することを目指しています。いまの時点で、残された時間は10年を切っています。
SDGsの目標が達成されれば、小学生のみなさんが、将来大人になったときに今より良い世界になっているはずです。
SDGsの14番目の目標「海の豊かさを守ろう」
SDGsには、2030年までに解決・改善することを目的にした17の目標が定められています。その14番目の目標が、「海の豊かさを守ろう」です。
すこしむずかしい言い方ですが、日本の外務省のパンフレットによると、「持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」という意味を持っています。
「海の豊かさを守ろう」の10のターゲット
SDGsの17の目標には、「どの問題を、どのようにして取り組んでいくか」という、具体的な解決策の方法をしめした、169の「ターゲット」がしめされています。
そのうちの10のターゲットが、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」に、あてはまるものです。
10のターゲットから、特に大事な7つのターゲットを、農林水産省のホームページから説明します。少しむずかしい言葉が多いですが、わかりやすい言いかえもつけて引用します。
番号 | ターゲットの内容(農林水産省による) | わかりやすく言うと… |
---|---|---|
1 | 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。 | 2025年までに、海が汚れる原因になるものを大きく減らす。 |
2 | 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靭性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護(ほご)を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。 | 2020年までに、海やそのまわりのいきもののくらしを守る。 |
3 | あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。 | 二酸化炭素を出す量を減らす(海水に二酸化炭素が溶けこむと酸性になる) |
4 | 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。 | 2020年までに、海の生き物の数を守るため、取りすぎないようにルールを決めて守る。 |
5 | 2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10%を保全する。 | 2020年までに、それぞれの国の海域と沿岸を、少なくとも10%守る。 |
6 | 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する(※)。 | 2020年までに、必要以上の量の魚をとるような漁業への補助金を禁止し、法に反した、または報告や規制のない漁業につながるような漁業補助金をなくし、そのような補助金を新たに作らないようにする。その際、開発途上の国ぐになどに対しては考慮する。 |
7 | 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。 | 2030年までに、小さな島国や経済的に貧しいとされる国に対して、海の資源を守った漁業でもお金が入るようにする。 |
(※)現在進行中の世界貿易機関(WTO)交渉およびWTOドーハ開発アジェンダ、ならびに香港閣僚宣言のマンデートを考慮。
どうしてSDGs目標14が必要なの?
さて、どうしてSDGsの目標で「海の豊かさを守ろう」があるのでしょうか。
そこには、海洋汚染の問題が深刻で、それをストップしないと、大変なことになることがわかっているからです。おもな海の問題を紹介します。
問題(1)海洋プラスチック問題
海洋プラスチックとは、海にたまっているプラスチックごみのことです。
私たちのくらしは、プラスチック製品に囲まれています。軽くて丈夫で、さまざまな使い方ができるプラスチックは、たいへん優れた素材です。私たちの暮らしは、今やプラスチックがないとなり立ちません。
毎日、大量のプラスチック製品が生産されています。きちんと回収されたごみは処理されますが、不法投棄されたりポイ捨てされたりしたプラスチックのごみは、自然の中で放置されます。
プラスチックごみは分解されず、自然の中で半永久的に残るということです。
海岸や船の上から不法投棄で捨てられたり、排水溝や川などから海に流れこんでくるなど、さまざまな経路でプラスチックごみは海にやってきます。
プラスチックは、自然に分解されることはありません。そのため、何も対策をしないと、プラスチックごみは海にどんどんたまっていくばかりです。
いま、世界の海には、合計で1億5,000万トンのプラスチックごみが蓄積されているといわれています。
またそこに、少なくとも毎年800万トンのプラスチックごみが、新たに流入しているともいわれています。
さらに、このまま海洋プラスチックごみの流入が続けば、2050年には、海の魚の量よりも、海洋プラスチックごみの方が多くなるといわれているのです(※1)。
(※1)出典:数値はWWFジャパン公式サイト「海洋プラスチック問題について」による
マイクロプラスチック
プラスチックごみの中で、大きさが5ミリ以下のものを、「マイクロプラスチック」とよびます。
マイクロプラスチックには、最初から小さな粒のような形で作られた「一次的マイクロプラスチック」と、自然環境の中で劣化が進んで粒状になった「二次的マイクロプラスチック」の、2つの種類があります。
自然の中に捨てられたプラスチックごみは、紫外線、風雨以外に河川で流れるときや海の波の力でも劣化が進み、ボロボロになって細かく砕かれ、最後には粒状になります。
最初から細かい粒子のような一次的マイクロプラスチックはもちろん、陸地に捨てられたプラスチックのごみも、砕けて二次的マイクロプラスチックになると、雨や川を通じて、最終的に海に流れ込みます。
そして、無数の粒状のプラスチックごみが、海にたまっていくのです。
こうしたプラスチックごみを、魚やウミガメ、クジラなどの海の生き物が、えさと間違えてプラスチックごみを食べてしまい、大きな問題になっている現状があります。
また、海水にまじったマイクロプラスチックが、魚の体の中などに取りこまれる心配もあります。
問題(2)海の生態系が乱れる
海洋プラスチックによって、海が汚染されると、生きものが海の中で生きづらくなってしまいます。
また、ごみをエサと間違えて食べてしまうと、ごみが魚の内臓を傷つけたりして、病気になったり、死んでしまう場合もあるのです。
こういったトラブルによって、海の生態系が乱れるおそれがあります。
問題(3)水産資源の減少
海洋プラスチックなどで海が汚れると、魚介類などの水産資源も減少します。
また、魚介類を取りすぎる乱獲も問題になっています。
このままの状態が続くと、水産資源の減少により、魚を食べられなくなるかもしれません。
問題(4)漁業の衰退
海洋汚染によって魚介類などの水産資源が減少すると、漁業が衰退する恐れがあります。海に浮かぶ小島の島国などでは、漁業を主な産業にしている国も少なくありません。
そういった国の経済に、悪い影響をおよぼす可能性もあります。
これは、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」にもつながる問題でもあります。
海の豊かさを守るために、「3つのR」を意識しよう
海の豊かさを守るためには、海に流れこむごみを少なくする必要があります。
では、私たちにできることはなんでしょうか。まずは、ものを大切にしたり、使い捨てを減らしたりするなどの意識を高めることが大切です。
そのような考え方を、3つの英語の頭文字をとって、「3R」といいます。この3Rを意識したくらしは、小学生のみなさんでも、個人で今すぐできるものです。
(1)Reduce(リデュース):ごみをへらす
ごみの量を少なくするという意味があります。
たとえば、買いもののときは、マイバッグを使い、レジ袋の使用量を減らしましょう。飲みものを持ち歩くときは、使い捨てのペットボトルの代わりに、マイボトルや水筒を持つようにしましょう。
こういった小さなことの積み重ねが、リデュースにあたります。
(2)Reuse(リユース):くり返し使う
プラスチックは、丈夫で長持ちです。だから、使い捨てするのはもったいないこと。使えるうちは、何回もだいじに使いましょう。
また、使わなくなったものを、なるべく人にあげたりして、再利用を心がけましょう。くり返し使い、再利用を心がけることで、ごみの量を減らすことができます。
(3)Recycle(リサイクル):資源として再利用する
リサイクルは、出てしまったごみを、資源として再利用することです。ごみが資源になって新しいものを生まれ変わるので、ごみの量を減らすことができます。
ちなみに日本では、プラスチックのリサイクルが、年々進んでいます。2020年の有効利用率は、なんと現在、86%にのぼります。
廃プラスチックを、不法投棄やポイ捨てをすると、海に流れ込んで海洋プラスチックごみになり、海を汚してしまいます。しかし、正しくリサイクルすることで、ごみではなく資源となります。
ですから、絶対にポイ捨てや不法投棄をしないことです。
資源になる廃プラスチックが増えるほど、新しく生まれる海洋プラスチックごみの量も減ります。
海の豊かさを守るには、プラスチックのリサイクルの意識を持つことがとても大切なことです。
プラスチックのリサイクルは、リサイクル専門の会社さんが行うことなので、私たち自身が直接リサイクルすることはできません。しかし、リサイクルのお手伝いはできます。
それは、使ったあとのプラスチック資源ごみを、住んでいる町の分別ルールを守って、正しくごみ出しをすることです。
リサイクルされたプラスチックは、さまざまな形で、また私たちの役に立っています。
まとめ
海の豊かさを守るために、小学生のみなさんにもいろいろなことができると分かりました。
ごみを減らす、ものを大事に使う、そしてリサイクルをするという「3R」を意識して生活しましょう。
特にプラスチックは、海洋プラスチックごみ問題につながります。プラスチックを正しくリサイクルすれば、海洋プラスチックごみを減らすことができるのです。
海の豊かさを守ることは、私たちの未来を守ることにもつながります。まずは、自分でも何ができるかを考え、実践していきましょう。
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