公開日:2022.12.26
更新日:2023.02.14
この製品、環境にやさしい?悪い?ライフサイクルアセスメントで考えれば解決!
環境
問題に向けての取り組みの一つとして、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」という考え方があります。
小学生のみなさんには、あまり聞いたことがない言葉かもしれません。
ライフサイクルアセスメントは、
原料
の
調達
から
廃棄
・リサイクルまでの「ものの一生」をふまえて、その
製品
の環境
負荷
を
評価
する考え方です。
地球環境を守りながらものづくりをする上で、ライフサイクルアセスメントはなくてはならないものです。
ライフサイクルアセスメントとは、どんなものなのか。わかりやすく
簡単
に
説明
しましょう。
ライフサイクルアセスメントって、どんなもの?
私
たちが日ごろ使っている「もの」には、原料の調達から製造、そして使い
終
わると
廃棄
される。またはリサイクルされるといった「一生」があります。
そのライフサイクルすべてを通して、環境にどれくらいの
負荷
をかけているのかを、わかりやすく
評価
する
方法
を「ライフサイクルアセスメント」といいます。
英語
では「
Life
Cycle
Assessment
(LCA)」と書きます。
ライフサイクルアセスメントは、ペットボトルや自動車といった
工業製品
はもちろん、目に見えない「サービス」なども対象にすることができます。
ライフサイクルアセスメントでなにがわかるの?
私たちの身の回りにある工業製品が、どれだけ環境に負荷をかけているのか。それぞれの製品を見ただけは、わかりにくいものです。
しかし、ライフサイクルアセスメントの
評価
があれば、
実際
にその製品が環境にどれくらい負荷をかけているのかを知ることができます。
ライフサイクルアセスメントをもとにして、ものづくりをすれば、トータルなエネルギー
消費
を
減
らすことができます。
それが世界全体に広がれば、
資源
を大きく
節約
できます。
二酸化炭素
の
排出量
も減らすことができます。
日本でのライフサイクルアセスメント
ライフサイクルアセスメントの考え方は、50年ほど前に生まれ、ヨーロッパやアメリカを中心に広がりました。
日本では、さまざまな事業者がLCAの考え方を取り入れられるよう、2013年3月に「
再生可能
エネルギー等の
温室効果
ガス
削減効果
に
関
するLCAガイドライン」が
策定
されました(2021年に
改訂版
を策定)。
日本の工業メーカーの多くで、このガイドラインにそって、LCAをもとにしたものづくりが行われています。
ライフサイクルアセスメントの評価例
ライフサイクルアセスメントの考え方は、実際の評価
例
を見ると、よくわかります。
ライフサイクルアセスメント評価例(1)
同じ使いみちの、原料がちがう「製品A」と「製品B」があったとします。
「製品Aと製品B、どっちの方が環境への負荷が
低
くて、エコな製品なんだろう?」と、考えてみましょう。
この2つの製品が目の前にあると、私たちは「この2つを作るとき、どれくらいの環境負荷がかかったのかな?」と、製造するときの環境負荷だけを比較しがちです。
そして、製造時の二酸化炭素の排出量を比べてみると、製品Aの方が多かったとします。それだけを見れば「二酸化炭素の排出量が少ない製品Bのほうが、エコな製品」となります(図左)。
しかし、
必
ずしもそれは、正しい答えではないかもしれません。
なぜなら、それは「製品の一生」の中では一部分だけだからです。
ライフサイクルアセスメントの考え方で、資源の
採掘
から
処理
・
処分
まですべてを見ると、製品Bの方が、二酸化炭素の排出量が多いかもしれません(図右)。
そうなると、
逆
に「製品Aのほうがエコな製品」となります。
このように、ライフサイクルアセスメントの評価で、それぞれの製品のトータルの環境負荷を知ることができます。そして、よりエコな素材や製品を
選
ぶことができるのです。
ライフサイクルアセスメント評価例(2)
ある食品の
容器包装
を「プラスチックから、それ
以外
の素材に
変
えたほうがいい」という意見が出ました。
「石油から作られるプラスチックは、環境によくないのでは」と、考える人がいたからです。
では、その考えが正しいのかどうが、ライフサイクルアセスメントの評価から検証してみましょう。
<
輸送時
>
プラスチックは軽くて
丈夫
な素材です。
食品の容器包装をプラスチックから変えた場合、素材がプラスチックより重ければ、輸送時のエネルギー消費量が増え、環境負荷が大きくなります。
<容器としての
機能
>
プラスチックはいろいろな形に成形しやすく、
酸素
や
湿気
を閉じこめるための
密封性
も高められます。
変えたい素材の密封性がプラスチックより弱いと、中身の
品質
を
保
つために、
冷凍
するなどの
必要
があります。
その結果、エネルギー消費が大きくなり、プラスチックよりも環境負荷を生むことになります。
<使用後のリサイクル>
プラスチックは、使い終わるとその多くがリサイクルなどで
再利用
されます。
変えたい素材が再利用しにくいなら、廃棄にかかるエネルギーの消費が大きくなり、プラスチックよりも環境負荷を生むことになります。
以上のことから、「この容器包装の場合、素材はプラスチックの方がエコになる」という答えが
導
き出されます。
ライフサイクルアセスメントで分かる「プラスチックはエコな素材!」
プラスチックは、
限
りある資源の石油を原料にして作られます。
また、石油の採掘にかかるエネルギーはもちろん、プラスチックの製造や、使い終わって廃棄されるときもエネルギーが必要になり、エネルギーを使うごとに二酸化炭素が
排出
されます。
しかし、プラスチック素材は
軽量
で丈夫です。長期間使えて、リサイクルもできます。
そのようなメリットが大きいので、プラスチックはエネルギー資源の節約や、環境への負荷を軽くすることに
貢献
しているといえます。
ライフサイクルアセスメントの評価を取り入れると、プラスチックはエコな素材だということがわかるのです。
プラスチックを使うことでエコになる例
食品などの容器包装
常温
で
長期保存
が可能な容器包装は、品質を
保持
するために使われるエネルギーを節約します。また素材の軽さから、輸送時のエネルギーも少なくできます。
自動車
自動車の
内装
や部品にプラスチックを使うことで
軽量化
が
実現
し、
燃費
が
良
くなります。ライフサイクル全体で、環境負荷を軽くできます。
住宅や家電の断熱材
住宅
や家電の
断熱材
としてプラスチックを使うと、エネルギーの消費を少なくでき、トータルで省エネ・エコになります。
まとめ
今回は、ライフサイクルアセスメントについて学びました。
私たちがふだん使っている製品にも、一つひとつ、ライフサイクルアセスメントの考え方が当てはまります。
どの製品を、どのように使えば、環境への負荷が小さいのか。そんなことを製品の一生もふまえて考えるようになれば、エコに対する意識も高まると思います。
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