公開日:2023.02.17
更新日:2024.10.31
ポリスチレンってどんなプラスチック?やさしく解説!
私たちの暮らしを豊かにしてくれるプラスチック。私たちの回りには、数えきれないほどのプラスチック製品があります。
プラスチックにはさまざまな種類がありますが、代表的なプラスチックはおよそ100種類あるとされています。
また、そのうち私たちの身の回りで広く使われているプラスチックにしぼると、その数は30種類ほどあるとされています。
この記事では、その中でも非常に多く使われている「ポリスチレン」というプラスチックにスポットライトを当て、その特徴や、どんな製品に使われているのかを説明します。
この記事を読んで、ポリスチレンへの理解を深めてください!
ポリスチレンってどんなプラスチック?
ポリスチレンは、プラスチックの種類の一つです。英語では「polystyrene」と書くので、「PS」と表記されることもあります。
ポリスチレンは「スチロール樹脂」とも呼ばれ、梱包材の「発泡スチロール」でおなじみのプラスチックです。
ポリスチレンは1839年に発見され、1930年代には実用化されました。プラスチック製品の原料としては、もっとも古いものとされています。
その後も研究が進み、用途に合わせてさまざまな種類のポリスチレンができるようになり、普及が進みました。
まずは、ポリスチレンとはどんなプラスチックなのかを簡単に説明します。
ポリスチレンの構造
最初に、ポリスチレンの構造を知りましょう。
プラスチックの構造を知るとき、かならず出てくるのが「モノマー」という物質です。
モノマーとは、プラスチックを構成している最小の基本物質で、「単量体」ともいいます。
モノマーはプラスチックの種類ごとに異なりますが、ほとんどのモノマーは、水素と炭素が結びついた、簡単な構造をしている低分子化合物(少ない分子で結びついている化合物)です(例外もあります)。
そのモノマーが、いくつも重なり合うことで、高分子化合物(たくさんの分子が結びついている化合物)ができあがります。
これをポリマーといいます。このポリマーが、プラスチックの本体となります。
ちなみに、モノマーがいくつも重なり合うことを「重合」といい、ポリマーはモノマーに対して「重合体」ともよばれます。
ポリスチレンのモノマーは「スチレン」という物質で、これがポリスチレンの基礎原料となります。
つまり、モノマーのスチレンが重合してできたポリマーが、ポリスチレンというわけです。
ポリスチレンの化学式と構造式
スチレンの化学式は「C8H8」で、炭素8個を持つ炭化水素です。
ポリスチレンは、スチレンの重合体で、「(C8H8)n」という化学式で表されます。
そして構造式は、このように表されます。
国内生産のプラスチック原材料の1割がポリスチレン
私たちの身の回りで広く使われているプラスチックは30種類ほどあります。
その中でも、特に使われているのが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルの4種類で、「4大汎用プラスチック」とよばれています。
日本におけるプラスチック原材料の生産実績のデータから見てみましょう。
2023年、日本国内で887万トンのプラスチック原材料が生産されました。そのうちポリスチレン類(ABSを含む)の生産量は92万トンで、これは、日本国内で生産されたプラスチック原材料の約1割に相当します。
日本プラスチック工業連盟 統計資料 を参考に作成
ポリスチレンの原料や作り方
ここでは、ポリスチレンの原料や作り方について説明します。
プラスチックの原料は「ナフサ」
ほとんどのプラスチックは(バイオマスプラスチックなど一部の例外を除いて)、石油からできています。
地下から掘り出されたままの石油は「原油」とよばれ、真っ黒でドロドロとした液体です。
この原油を、精製プラントで加熱・蒸留すると、蒸気になります。その蒸気を冷やしていくと、ガソリンや灯油、軽油といった、さまざまな成分の油に分離されます。
その一つが「ナフサ」という油です。このナフサが、プラスチックの原料となります。
ポリスチレンの作り方
ナフサは液体ですが、800℃以上の高温の炉の中に送りこむと、「熱分解反応」という反応を起こします。
すると、「エチレン」や「プロピレン」などさまざまなモノマーや、ベンゼンなどの化合物が作られます。
次に、ナフサからできたエチレンとベンゼンを化学反応させると、エチルベンゼンという物質ができます。
そしてエチルベンゼンから水素を取り除くと、スチレンというモノマーができあがります。
そしてスチレンを重合すると、ポリスチレンができあがります。
ポリスチレンにはどんな特徴があるの?
ポリスチレンのいちばんの特徴は、加工がしやすく、形の再現性が良いということです。そのため、食品容器や電気製品などさまざまな用途で、幅広く使用されています。
ただし、常用耐熱温度(短時間たえる温度)は70〜90℃と、熱にはあまり強くありません。
プラスチック素材の中には、ポリエチレンのように接着性が悪いものもあります。しかしポリスチレンはポリエチレンと違い、接着性は高いといえます。
それは、プラ板やプラモデルの材料にポリスチレンが使われることが多いことからもわかるでしょう。
ポリスチレンには、ポリスチレンをそのまま使った「汎用ポリスチレン」と、発泡成形され断熱保温性にすぐれた「発泡ポリスチレン(発泡スチロール)」があります。
それぞれのポリスチレンの特徴をみてみましょう。
ポリスチレンのおもな特徴
名前 | 汎用ポリスチレン | 発泡ポリスチレン |
---|---|---|
おもな特徴 | ・透明で剛性があるGPグレードと、乳白色で耐衝撃性をもつHIグレードがある ・着色がしやすい ・電気を通さない(絶縁性) ・水に沈む | ・軽くて剛性がある ・ 断熱 保温性 に 優 れている ・水に 浮 く |
ポリスチレンにはどんな製品に使われている?
ポリスチレンは、安全な食品包装材料として各国で使用が認められています。日本では、ポリスチレンの60%が、食品包装の用途で使われています。
ポリスチレンは食品の包装やカップめんの容器、工業用の部材など、私たちの身近な製品に使われていますが、毒性の問題はないので、安心して使うことができます。
またそのほか、CDケースなどにも使われています。
ポリスチレンが使われているおもな製品
名前 | 汎用ポリスチレン | 発泡ポリスチレン |
---|---|---|
おもな特徴 | ・OA機器やテレビのハウジング ・CDケース ・食品容器 ・プラ板 ・プラモデル など | ・梱包緩衝材 ・食品包装材料 ・魚箱(トロ箱) ・食品用トレイ ・カップめん容器 ・たたみの芯 など |
ポリスチレンのリサイクル
プラスチックは、限りある資源である石油から作られています。また、プラスチックは自然界で分解されず、ゴミとして自然界に出てしまうと、環境破壊につながります。
使い終わったプラスチックを、資源として再利用することは、私たちの未来の暮らしを守るために非常に大切なことです。
プラスチックのリサイクルの現状
廃プラスチックの中のポリスチレンの割合
2022年の国内の廃プラスチック排出量は、823万トンでした。
このうち、ポリスチレンは97万トンをしめています。これは、廃プラスチックの約12%にのぼります。
※ポリスチレン類:AS、ABS含む
出典:冊子「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 2022年」
廃プラスチックは3つの方法(ほうほう)でリサイクルされる
廃プラスチックのリサイクル方法は、新しいプラスチック製品(再生品)の原料として利用される「マテリアルリサイクル」、化学技術によって製品の原料にしたり炉の燃料に変える「ケミカルリサイクル」、そしてマテリアルリサイクルもケミカルリサイクルもできないプラスチックを燃やして熱エネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」の3種類があります。
廃プラスチックの有効利用率(3つのリサイクルの合計)は、2022年で87%となっています。
ポリスチレンとマテリアルリサイクル
上の図からもわかるとおり、2022年に排出された廃プラスチックのうち、180万トンがマテリアルリサイクルされました。
その内訳を見てみると、もっとも多くマテリアルリサイクルされているのは指定ペットボトル用のポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)で、53万トン(約30%)です。
ポリスチレン類は15万トン(約8%)がマテリアルリサイクルされています。
※ポリスチレン類:AS、ABS含む
出典:冊子「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 2022年」
リサイクルで私たちにできること
プラスチックのリサイクルは、リサイクル業者の人たちが行うことで、私たちは直接、プラスチックのリサイクルをすることはできません。
しかし、リサイクルの手助けをすることはできます。それは、使い終わったプラスチックは、住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
リサイクルされたプラスチックは、さまざまな形で、また私たちの役に立ってくれます。
廃プラスチックの分別は「識別マーク」を参考に
ポリスチレンは、さまざまなプラスチック製品で使われています。そのため必ずしも、すべてのポリスチレン製品が資源としてリサイクルできるわけではありません。
リサイクルできるプラスチック製品には、容器包装リサイクル法にのっとって、識別マークがついています。
代表的な識別マークは、ペットボトルの「PET」、ペットボトルを除くプラスチック製容器包装の「プラ」です。
リサイクルできるポリエチレンのプラスチック製品には、「プラ」の識別マークがあります。
この識別マークが付いているときは、プラスチック製容器包装としてごみ分別し、資源として出しましょう。
ちなみに、100%ポリスチレンでできているプラスチック製品には、「プラ」の識別マークの下に小さく「PS」と記入されていることがあります。
写真のペットボトルでは、ボトル本体がポリエチレンテレフタレート(PET)で、キャップがポリエチレン(PE)。そして、ラベルがポリスチレン(PS)でできていることがわかります。
本体はペットボトルとして資源に出し、ポリエチレンのキャップとラベルのポリスチレンは「プラ」の識別マークがついているので、プラスチック製容器包装として資源で出すことができます。
ごみや資源の分別ルールは、住んでいるまちによって異なります。
廃プラスチックをごみや資源として分別するときは、まちで出されている「家庭ごみ・資源の分別早見表」などを見て、キチンと確認するようにしましょう。
まとめ
今回は、プラスチックのポピュラーな種類の一つ、ポリスチレンについて学びました。
おなじみの発泡スチロールや、CDケースなど、さまざまなプラスチック製品にポリスチレンは使われています。
ポリスチレンをはじめとしたプラスチックが、私たちの暮らしを便利にしてくれていることを、この記事で知っていただけるとうれしいです。
そして、プラスチック製品は大切に使い、使い終わったものは住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
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