公開日:2023.02.24
更新日:2024.10.24
ポリカーボネートってどんなプラスチック?やさしく解説!
私たちの暮らしを豊かにしてくれるプラスチック。私たちの回りには、数えきれないほどのプラスチック製品があります。
プラスチックにはさまざまな種類がありますが、代表的なプラスチックはおよそ100種類あるとされています。
また、そのうち私たちの身の回りで広く使われているプラスチックにしぼると、その数は30種類ほどあるとされています。
この記事では、その中でも非常に多く使われている「ポリカーボネート」というプラスチックにスポットライトを当て、その特徴や、どんな製品に使われているのかを説明します。
この記事を読んで、ポリカーボネートへの理解を深めてください!
ポリカーボネートってどんなプラスチック?
ポリカーボネートは、英語では「Polycarbonate」と書きます。そのため、「PC」と略して表記されることもあります。
ポリカーボネートそのものは、1898年にドイツのミュンヘン大学で発見されました。しかし、プラスチック製品の素材として初めて商品化されたのは1953年のことです。
まずは、ポリカーボネートとはどんなプラスチックなのかを簡単に説明します。
ポリカーボネートの構造式
ポリカーボネートの構造式は、このように表されます。
ポリカーボネートはたくさん生産されるプラスチックの一つ
私たちの身の回りで広く使われているプラスチックは30種類ほどあります。
その中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルの4種類は、たいへんよく使われているため「4大汎用プラスチック」とよばれています。
ポリカーボネートは、この4大汎用プラスチックほどではありませんが、さまざまな使いみちがあるので、生産量が多いプラスチックのひとつです。
日本におけるプラスチック原材料の生産実績のデータから見てみましょう。
2023年、日本国内で887万トンのプラスチック原材料が生産されました。そのうちポリカーボネートの生産量は23万トンとなっています(ちなみに、もっとも多いポリプロピレンの生産量は、208万トンとなっています)(※1)。
日本プラスチック工業連盟 統計資料 を参考に作成
ポリカーボネートの原料や作り方
ここでは、ポリカーボネートの原料や作り方について説明します。
プラスチックの原料は「ナフサ」
ほとんどのプラスチックは(バイオマスプラスチックなど一部の例外を除いて)、石油からできています。
地下から掘り出されたままの石油は「原油」とよばれ、真っ黒でドロドロとした液体です。
この原油を、精製プラントで加熱・蒸留すると、蒸気になります。
その蒸気を冷やしていくと、ガソリンや灯油、軽油といった、さまざまな成分の油に分離されます。その一つが「ナフサ」という油です。
このナフサが、プラスチックの原料となります。
ポリカーボネートの作り方
ナフサは液体ですが、800℃以上の高温の炉の中に送りこむと、「熱分解反応」という反応を起こします。
すると、「ベンゼン」や「プロピレン」などの、プラスチックのもとになる石油化学基礎物質が作られます。
このベンゼンとプロピレンを反応させると、フェノールという化学物質が作られます。
そして、フェノールとアセトンという化学物質を反応させると、ビスフェノールAという化学物質が作られます。
このビスフェノールAが、ポリカーボネートのおもな原料となります。
ポリカーボネートには3つの作り方があります。ビスフェノールAとホスゲン(塩化カルボニル)を原料にする方法がふたつ、もうひとつはビスフェノールAとジフェニルカーボネートを原料にする方法です。
おもに使われているのが、有機溶剤と水を使い、ビスフェノールAとホスゲンを原料とする方法で、「界面重縮合法」と呼ばれています。
また、ポリカーボネートにガラス繊維やABS樹脂などの素材を配合して、さらに強度などを高めたプラスチック素材を作ることもできます。
ポリカーボネートにはどんな特徴があるの?
ポリカーボネートのもっとも大きな特徴は、衝撃に強いことです(これを「耐衝撃性」といいます)。
普通のガラスと比べると、200倍以上も衝撃に強いといわれ、プラスチックの中ではもっとも耐衝撃性があります。ハンマーで割ろうとしても割れないほど強いです。
また、ガラスに近い透明度もあります。
火に強く、火が移っても燃え広がらずに自然に火が消えます(自己消火性といいます)。
-40℃の低温から125℃までの高温までの幅広い温度に耐えられるので、比較的、低温や高温にも強いといえます。
成形加工のしやすさも、ポリカーボネートの大きな特徴です。
プラスチック成形には、溶かしたプラスチックを金型に入れて固める射出成形や、溶かしたプラスチックを型から押し出して成形する押出成形、溶かしたプラスチックを風船のようにふくらませて成形するブロー成形など、さまざまな成形方法があります。
ポリカーボネートは、こういったプラスチック成形のほとんどの方法に対応しています。
また、溶けた状態のプラスチックが冷えて固まるときに縮みにくいので(成形収縮率が小さいといいいます)、精密な加工が可能です。
水に浮く重さで、ほかのプラスチックよりも軽いので、まさに「軽くて丈夫な、メリットの多いプラスチック」といえます。
その一方で、有機溶剤や界面活性剤といった薬品には弱い、傷がつきやすいといったデメリットもあります。
ポリカーボネートのおもな特徴は以下のとおりです。
名前 | ポリカーボネート |
---|---|
おもな特徴 | ・衝撃に強く丈夫(耐衝撃性) ・透明 ・燃えにくい(自己消火性) ・使える温度幅が広い(-40℃〜125℃) ・成形した時の寸法精度が高い ・さまざまな方法で成形できる ・水に浮く ・薬品に弱い(有機溶剤や界面活性剤)など ・傷がつきやすい |
ポリカーボネートはどんな製品に使われている?
ポリカーボネートには、衝撃に強く、さまざまな成形ができ、加工の精度が高いなど、さまざまなメリットがあります。
そのため、たいへん多くのプラスチック製品に使われています。みなさんが使っている携帯電話やパソコンにも、ポリカーボネートが使われているかも知れません。
ポリカーボネートが使われているおもな製品
名前 | ポリカーポネート |
---|---|
おもな製品 | ・CD ・スマートフォン ・ノートパソコン ・カーポート ・バイクの 風防 ・車のヘッドランプ ・ 防音 板 ・トランク
など
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ポリカーボネートのリサイクル
プラスチックは、限りある資源である石油から作られています。また、プラスチックは自然界で分解されず、ゴミとして自然界に出てしまうと、環境破壊につながります。
使い終わったプラスチックを、資源として再利用することは、私たちの未来の暮らしを守るために非常に大切なことです。
プラスチックのリサイクルの現状
廃プラスチックは3つの方法でリサイクルされる
廃プラスチックのリサイクル方法は、新しいプラスチック製品(再生品)の原料として利用され「マテリアルリサイクル」、化学技術によって製品の原料にする「ケミカルリサイクル」、そしてマテリアルリサイクルもケミカルリサイクルもできないプラスチックを燃やして熱エネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」の3種類があります。
廃プラスチックの有効利用率(リサイクルと熱エネルギーとして利用された廃プラスチックの合計)は、2022年で87%となっています。
私たちがイメージする「リサイクル」は、使い終わったプラスチック製品を新しい製品に生まれ変わらせる「マテリアルリサイクル」や製品の原料にする「ケミカルリサイクル」ではないでしょうか。
リサイクルできるプラスチックには「リサイクルマーク」がついている
リサイクルができるプラスチックの代表例は、ペットボトルをはじめ、ポリプロピレンやポリエチレンなどのプラスチックです。
こういったリサイクルできるプラスチックには、「資源の有効な利用の促進に関する法律」(通称:リサイクル法、資源有効利用促進法)や「容器包装リサイクル法」(通称:容リ法)によって、「PET(ペットボトル)」や「プラ」といったリサイクルの識別マークの表示が義務づけられています。
写真のプラスチック製品では、ボトル本体やキャップ、中栓がポリエチレン(PE)、ラベルがポリプロピレン(PP)でできていることがわかります。
そして「プラ」の識別マークがついているので、プラスチック製容器包装として資源で出すことができます。
しかし、ポリカーボネートが使われているプラスチック製品には、こういったリサイクルの識別マークはついていません。
そもそもですが、プラスチック製品を見て、ポリカーボネートが使われているかどうかは、まず分かりません。
では、どうしたらいいのでしょうか。
ポリカーボネートに限らず、識別マークのない使い終わったプラスチックは、住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをすることが大切です。
プラスチックは住んでいるまちの分別ルールを守ろう
ごみや資源の分別ルールは、住んでいるまちによって異なります。
廃プラスチックをごみや資源として分別するときは、まちで出されている「家庭ごみ・資源の分別早見表」などを見て、キチンと確認するようにしましょう。
例えば、ポリカーボネートで作られているCDやDVDのディスクは、住んでいるまちによっては、「不燃ごみ」で回収されるところもあれば、「可燃ごみ」で回収されるところもあります。
また、トランクもポリカーボネートで作られていることが多いですが、トランクのような大きなごみは、粗大ごみで出すのが一般的です。
このように、ポリカーボネートという素材ではなく、製品の名前で分別ルールを調べるようにしましょう。
まとめ
今回は、プラスチック素材のポリカーボネートについて学びました。ポリカーボネートはCDや携帯電話など、私たちの身の回りのプラスチック製品にたくさん使われています。
また工場で、ポリカーボネートを使って成形加工するときにできるロス品などは、文房具などの原料にリサイクルされています。
どこかに「リサイクルしたポリカーボネート(R-PC)を使っている」と書かれているかもしれません。
ふだん「ここにポリカーボネートが使われている!」と意識することは少ないと思います。
この記事で、ポリカーボネートが私たちの暮らしを便利にしてくれていることを知っていただけるとうれしいです。
そして、プラスチック製品は大切に使い、使い終わったものは住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
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