公開日:2023.02.24
更新日:2024.10.24
ポリアミドってどんなプラスチック?やさしく解説!
私たちの暮らしを豊かにしてくれるプラスチック。私たちの回りには、数えきれないほどのプラスチック製品があります。プラスチックにはさまざまな種類がありますが、代表的なプラスチックはおよそ100種類あるとされています。
また、そのうち私たちの身の回りで広く使われているプラスチックにしぼると、その数は30種類ほどあるとされています。
この記事では、その中でも非常に多く使われている「ポリアミド」というプラスチックにスポットライトを当て、その特徴や、どんな製品に使われているのかを説明します。
この記事を読んで、ポリアミドへの理解を深めてください!
ポリアミドってどんなプラスチック?
ポリアミドは、英語では「Polyamide」と書きます。そのため、「PA」と略して表記されることもあります。
ポリアミドというと、あまり聞いたことがないという人が多いと思いますが、「ナイロン」といえば、みなさん知っているのではないでしょうか。
ナイロンという別名は、アメリカのデュポン社という会社が発売している、ポリアミドの商品名です。ポリアミドは、1935年にそのデュポン社で開発されました。
最初は「世界で初めての合成繊維」として使われることが多かったポリアミドですが、次第に自動車部品や電気部品、レトルト食品の包装材など、さまざまな製品でも多く使われるようになりました。
まずは、ポリアミドとはどんなプラスチックなのかを簡単に説明します。
ポリアミドの分子式と構造式
ポリアミドには、炭素の結合のしかたによって、いつくかの種類があります。
ここでは、ポリアミドの中でも生産量が比較的多い「ナイロン6」「ナイロン66」という2つのポリアミドについて説明します。
ナイロン6
ナイロン6の分子式は、「(C6H11NO)n」となります。
ナイロン66
ナイロン66の分子式は、「(C12H22N2O2) n」となります。
そして、それぞれの構造式は、このように表されます。
ポリアミドはたくさん生産されるプラスチックの一つ
私たちの身の回りで広く使われているプラスチックは30種類ほどあります。
その中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルの4種類は、たいへんよく使われているため「4大汎用プラスチック」とよばれています。
ポリアミドは、この4大汎用プラスチックほどではありませんが、さまざまな使いみちがあるので、生産量が多いプラスチックのひとつです。
日本におけるプラスチック原材料の生産実績のデータから見てみましょう。
2023年、日本国内で887万トンのプラスチック原材料が生産されました。そのうちポリアミドの生産量は18万トンとなっています。(ちなみに、もっとも多いポリプロピレンの生産量は、208万トンとなっています)(※1)。
日本プラスチック工業連盟 統計資料 を参考に作成
ポリアミドの原料や作り方
ここでは、ポリアミドの原料や作り方について説明します。
プラスチックの原料は「ナフサ」
ほとんどのプラスチックは(バイオマスプラスチックなど一部の例外を除いて)、石油からできています。
地下から掘り出されたままの石油は「原油」とよばれ、真っ黒でドロドロとした液体です。
この原油を、精製プラントで加熱・蒸留すると、蒸気になります。
その蒸気を冷やしていくと、ガソリンや灯油、軽油といった、さまざまな成分の油に分離されます。その一つが「ナフサ」という油です。
このナフサが、プラスチックの原料となります。
ポリアミドの作り方
ナフサは液体ですが、800℃以上の高温の炉の中に送りこむと、「熱分解反応」という反応を起こします。
すると、「エチレン」や「プロピレン」、「ベンゼン」、「ブタジエン」などの、プラスチックのもとになる石油化学基礎物質が作られます。
そして、このベンゼンから、シクロヘキサンという化学物質が作られます。
このシクロヘキサンからさらにε-カプロラクタムという化学物質が合成されます。
そして、ε-カプロラクタムを化学的につなぎ合わせる(「重合」といいます)ことで、ナイロン6が作られます。
ナイロン66は、同じく基礎物質のブタジエンから作られる、アジピン酸とこれもブタジエンから作られるヘキサメチレンジアミンという化学物質が原料となります。
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンを縮合重合という化学反応をさせて作られます。
ポリアミドにはどんな特徴があるの?
ポリアミドはその種類によって、性質が大きく違います。
ここでは、私たちの身の回りにたくさんあるポリアミドということで、ナイロン6とナイロン66についての特徴を説明します。
ナイロン6とナイロン66のいちばんの特徴は、強度が高く、摩擦時の摩耗に強いことです。
そのほかにも、融点が高く(ナイロン6で225℃、ナイロン66で265℃)、プラスチックの中では熱に強いこと、油や薬品などに強いこと、酸素を通しにくいこともメリットです。
その一方で、同じように繊維で使われることが多いポリエステルよりも、時間がたつと黄ばみやすいというデメリットもあります。
ポリアミドのおもな特徴は以下のとおりです。
ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66)のおもな特徴
名前 | ポリアミド |
---|---|
おもな特徴 | ・強度が高い ・摩擦時の摩耗に強い ・融点が高い(ナイロン6で225℃、ナイロン66で265℃) ・吸水率が高く吸水時に柔らかくなる ・熱に強い ・酸素を通しにくい ・時間がたつと黄ばみやすい |
ポリアミドはどんな製品に使われている?
ナイロン6やナイロン66といった強度が高くて摩擦時の摩耗に強いポリアミドは、衣料品の合成繊維にぴったりな素材です。
もともと最初に使われたのが、ストッキングの素材でした。登場時は「くもの糸より細く、絹よりも美しく、鋼鉄よりも強い」と言われるほどでした。
その後、さまざまなポリアミドが開発されたことで、衣料品だけでなく、自動車部品や電気・電子部品、食品用フィルム、バッグ、歯ブラシなどの日用品など、さまざまな製品が作られるようになりました。
ポリアミドが使われているおもな製品
名前 | ポリアミド |
---|---|
おもな製品 | ・衣類の合成繊維 ・ファスナー ・自動車部品 ・電気・電子部品 ・食品用フィルム(レトルト食品の袋など) ・つり糸 ・バッグ ・玄関マット など |
ポリアミドのリサイクル
プラスチックは、限りある資源である石油から作られています。また、プラスチックは自然界で分解されず、ゴミとして自然界に出てしまうと、環境破壊につながります。
使い終わったプラスチックを、資源として再利用することは、私たちの未来の暮らしを守るために非常に大切なことです。
プラスチックのリサイクルの現状
廃プラスチックは3つの方法でリサイクルされる
廃プラスチックのリサイクル方法は、新しいプラスチック製品(再生品)の原料として利用される「マテリアルリサイクル」、化学技術によって製品の原料にする「ケミカルリサイクル」、そしてマテリアルリサイクルもケミカルリサイクルもできないプラスチックを燃やして熱エネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」の3種類があります。
廃プラスチックの有効利用率(リサイクルと熱エネルギーとして利用された廃プラスチックの合計)は、2022年で87%となっています。
私たちがイメージする「リサイクル」は、使い終わったプラスチック製品を新しい製品に生まれ変わらせる「マテリアルリサイクル」や製品の原料にする「ケミカルリサイクル」ではないでしょうか。
リサイクルできるプラスチックには「リサイクルマーク」がついている
リサイクルができるプラスチックの代表例は、ペットボトルをはじめ、ポリプロピレンやポリエチレンなどのプラスチックです。
こういったリサイクルできるプラスチックには、「資源の有効な利用の促進に関する法律」(通称:リサイクル法、資源有効利用促進法)や「容器包装リサイクル法」(通称:容リ法)によって、「PET(ペットボトル)」や「プラ」といったリサイクルの識別マークの表示が義務づけられています。
写真のプラスチック製品では、ボトル本体やキャップ、中栓がポリエチレン(PE)、ラベルがポリプロピレン(PP)でできていることがわかります。
そして「プラ」の識別マークがついているので、プラスチック製容器包装として資源で出すことができます。
しかし、ポリアミドが使われているプラスチック製品は、こういったリサイクルの識別マークがついていないことが多いです。
そもそもですが、プラスチック製品を見て「ポリアミドが使われている」と分かることは、ほとんどありません。
洗たく洗剤の詰め替え用パッケージに、多層構造の一部で使われているなど、あまり表に出てこないプラスチックだからです。
では、どうしたらいいのでしょうか。
ポリアミドに限らず、識別マークのない使い終わったプラスチックは、住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをすることが正解です。
プラスチックは住んでいるまちの分別ルールを守ろう
ごみや資源の分別ルールは、住んでいるまちによって異なります。
廃プラスチックをごみや資源として分別するときは、まちで出されている「家庭ごみ・資源の分別早見表」などを見て、キチンと確認するようにしましょう。
例えば、ポリアミドで作られている製品の中には、バッグや玄関マットなどもあります。
住んでいるまちによっては、「不燃ごみ」で回収されるところもあれば、「可燃ごみ」で回収されるところもあります。
また、衣類にはリサイクルの識別マークはついていませんが、衣類には「ナイロン」と記載されたタグがついていることはあります。
衣類は一般的には、汚れていないものは資源として回収され、汚れているものは燃えるごみとして扱われることが多いです。
このように、ポリアミドという素材ではなく、製品の名前で分別ルールを調べるようにしましょう。
まとめ
今回は、プラスチック素材のポリアミドについて学びました。ポリアミドというとあまり聞いたことがないかもしれませんが、「ナイロン」といえば、よく聞くことと思います。
いま着ている服にも、ナイロンが使われているかもしれません。この記事で、ポリアミドが私たちの暮らしを便利にしてくれていることを知っていただけるとうれしいです。
そして、プラスチック製品は大切に使い、使い終わったものは住んでいるまちの分別ルールを守って、正しくごみ出しをしましょう。
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