公開日:2023.03.24
更新日:2023.03.24
サーキュラーエコノミーって何? 3Rとの違いは? やさしく解説!
私たちがふだん快適に暮らしていけるのは、冷暖房のある家に暮らし、たくさんのものに囲まれて生活できているからです。
でもその生活を支えているのは、石油などの限りある資源です。石油を燃やすことで発生する二酸化炭素が地球温暖化の原因になったり、石油から作られたプラスチックが不法投棄など間違った捨てられ方をされ、ごみになって海洋プラスチック問題を引き起こしたりするなど、さまざまな問題や課題が起きています。
このような資源の使い過ぎをやめて、地球にやさしいエコな暮らしを心がけようという動きが広がっています。
そんな考え方の一つが、サーキュラーエコノミーです。とはいえ、まだあまり聞いたことがない言葉で「どんな意味なの?」と、分からない人の方が多いのではないでしょうか。
ここでは、サーキュラーエコノミーとはどんな考え方で、サーキュラーエコノミーが広がると私たちの暮らしはどう変わるのかを、例をまじえてやさしく説明します。
同じような考え方の「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」との違いも説明します。
この記事を読んで、サーキュラーエコノミーへの理解を深めてください!
- 目次
サーキュラーエコノミーってどんな意味?
まずは、サーキュラーエコノミーという言葉の意味から説明しましょう。
サーキュラーエコノミーとは
サーキュラー(Circular)は、「循環」という意味の英語です。
エコノミー(Economy)は、「経済」という意味の英語です。言葉をそのまま日本語にすると「循環経済」という意味になります。
私たちは今まで、石油や石炭などの資源(原料)を地下から掘り出すなどして取り出し、それを製品の原料にしたり、エネルギーにしたりしていました。
そして、製品を利用し、使い終わったら廃棄物として捨てていました。つまり、資源は取り出す→使う→廃棄するという、1本の線のような道のりで消費されていました。
これを「リニアエコノミー(線型経済)」といいます。
円のことを英語で「サークル(Circle)」といいます。ですからサーキュラー(Circular)は、簡単なことばでいえば、「円のようにぐるぐる回る」と表現できます。
サーキュラーエコノミーは、直線型のリニアエコノミーを「再設計」して作り変え、資源を円のように循環して有効に使おう、という考え方といえます。
サーキュラーエコノミーの循環システム
サーキュラーエコノミーの循環システムは、以下の図のように表現できます。
直線型のリニアエコノミーと比べて、円のようにぐるぐると循環していることがお分かりいただけると思います。
サーキュラーエコノミーが進むと資源と環境が守られる
サーキュラーエコノミーの考え方が進めば、私たちは限りある資源をより有効に使うことができます。
また、二酸化炭素もごみも最小限の量しか出なくなるので、地球環境を守ることにつながります。
世界的に取り組みが進んでいるSDGs(持続的な開発目標)に、サーキュラーエコノミーはなくてはならない考え方です。
オランダでは、2050年までに100パーセント、サーキュラーエコノミーに移ることを目標に掲げています。
サーキュラーエコノミーのしくみ
ここでは、サーキュラーエコノミーのしくみを説明します。
サーキュラーエコノミーの3原則
サーキュラーエコノミーには、3つの原則(きまり)があります。
この原則は、世界のサーキュラーエコノミーを推進する団体のひとつであるエレン・マッカーサー財団という団体が決めたもので、サーキュラーエコノミーのことを説明するとき、よく使われます。
小学生にもなるべくわかりやすいことばで、この3原則を説明します。
3原則(1)廃棄物と汚染を生み出さないデザイン
資源を使ってものをつくるとき、有害な物質を出したり、水や大気が汚染されたり、交通渋滞が引き起こされたりして、人の健康や自然環境に悪い影響がなるべく出ないようにする。
3原則(2)製品(せいひん)製品と原料を使い続ける
製品を設計するときから、耐久性がよく、作り直したりリサイクルしたりしやすい製品や部品、素材を選ぶ。
また、バイオ由来素材(石油などではなく植物などからできたもの)などの環境にやさしい素材を選ぶ。
3原則(3)自然のシステムを再生する
太陽光や風力など再生可能エネルギーを活用したりして、石油や石炭といった再生できない資源の使用を少なくする。
また、土に栄養を返すなど、環境を保護するだけでなく、積極的に改善する。
サーキュラーエコノミーと「3R」は何が違うの?
サーキュラーエコノミーの説明をするとき、必ずといっていいほど迷うのは「リデュース・リユース・リサイクルの『3R』と、どう違うの?」ということです。
「3R」の言葉の意味を再確認しよう
「3R」は、資源問題や環境問題といったさまざまな課題を改善・克服するために、呼びかけられている心がけです。
・リデュース(Reduce):ごみの発生をなるべく減らす
・リユース(Reuse):同じものを繰り返し使ってごみの量をなるべく減らす
・リサイクル(Recycle):使い終わったものをごみにせず、資源として再活用する
この3つの英語の頭文字をとって、「3R」と呼んでいます。
サーキュラーと「3R」の違い
3Rでは、ごみや廃棄物をなるべく出さないようにしたり、再活用したりします。そういった部分は、サーキュラーエコノミーと同じといっていいでしょう。
しかし、サーキュラーエコノミーと「3R」には、違うところもあります。
「3R」では、廃棄物(ごみ)は出ることが前提になっています。先ほど説明した 一方通行型の「リニアエコノミー」をベースにした、ごみを少なくする改良版といえます。
それに対してサーキュラーエコノミーは、そもそも、ごみを出さない、そして環境破壊を発生させない、という考えが基本になっています。
ですから、製品をつくるとき、はじめからリユースやリサイクルがしやすい設計にしたり、長く使い続けられるための工夫をされたりなどしています。
もちろん、サーキュラーエコノミーでもごみがゼロになることは、現実的には難しいでしょう。それでも、ごみを大きく減らし、地球環境を守る大きな助けになることは間違いありません。
サーキュラーエコノミーとプラスチック
サーキュラーエコノミーの考え方を進めば、私たちが日ごろ使っているプラスチック製品は、どのようになっていくのでしょうか。
プラ新法でプラスチックのサーキュラーエコノミーが進む
日本では、2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)」が施行されました。
この法律では、サーキュラーエコノミーの考え方を反映し、プラスチックの資源循環を進めることが目的とされています。
プラスチック製品に関わる企業や自治体は、プラスチックを使った製品の設計・製造から、販売・提供、そして使い終わったプラスチック製品の回収や再利用するまでの「プラスチック製品の一生」のすべての段階で、資源循環を考えよう、ということです。
具体的には、「プラスチックの3R(リデュース、リユース、リサイクル)」に加えて、カーボンニュートラルな(二酸化炭素の排出量が少ない)バイオマスプラスチックなどの再生可能資源(Renewable)の利用を進めることをうたっています。
プラ新法によって、プラスチックの3Rと再生可能資源の利用が進めば、
・プラスチックの大量生産
・プラスチックの大量消費
・プラスチックの大量廃棄
という、3つの問題を減らしていくことができます。
それによって、地球温暖化の防止や、海洋プラスチックごみから海の汚染を守ったり、資源問題を改善したりといった改善が可能になります。
プラ新法については、こちらの記事でくわしく説明しています。
サーキュラーエコノミーと私たちの暮らし
サーキュラーエコノミーの考え方が広がると、私たちの暮らしはどう変わるのでしょうか。
ここでは、具体的な例をまじえて紹介します。
プラスチック製品が変わる
サーキュラーエコノミーの考え方にそって、プラ新法では、プラスチック使用製品製造事業者(プラスチックを使って製品を作っている会社など)に対して、設計から製品づくり、そして使い終わって廃棄することまで考え、プラスチック製品を作ることを求める「プラスチック使用製品設計指針」が定められています。
この設計指針によって、今まで使ってきたプラスチック製品も、より環境に配慮し、資源循環しやすいものに変わっていくでしょう。
設計指針の中から、いくつかの内容を紹介しましょう。
・減量化
プラスチック製品に使われる材料の使用量を減らします。
・包装の簡素化
フィルム包装などをシンプルにして、材料の使用量を減らします。
・長期使用化・長寿命化
プラスチック製品の寿命を長くしたり、部品交換できるようにしたりして、材料の使用量を減らします。
・材料の変更
プラスチック製品の材料を、プラスチック以外の素材や再生利用しやすい材料、再生プラスチック、植物から作られるバイオプラスチックなどに変更します。
「プラスチックは、えらんで・減らして・リサイクル」が合言葉
サーキュラーエコノミーは、企業や自治体だけが進めるものではありません。
私たちの日ごろの暮らしも、サーキュラーエコノミーの考え方に沿って、少しずつ変えていくように、行動していきましょう。
その取り組みのキーワードは「プラスチックは、えらんで・減らして・リサイクル」です。
取り組み(1)えらんで
資源循環や環境に配慮した、エコなプラスチック製品をえらびましょう。
・包むものがシンプルで、むだな材料を使っていない商品(簡易包装)
・部品が新品ばかりでなく、使った部品を再利用した商品
・いろいろな材料がごちゃまぜでリサイクルしにくい製品ではなく、同じ素材を使ってリサイクルしやすい商品
・プラスチックにかわる再生可能な素材(木やバイオマスプラスチックなど)を使った商品
取り組み(2)減らして
プラスチックをむだに使いすぎないように心がけ、使い捨てプラスチックのごみを減らしましょう。
たとえば、プラスチック製のレジ袋のかわりにエコバッグを持ち歩いたり、マイボトルやマイスプーンなどを使ったりして、プラスチック製品の使い捨てを減らしましょう。
取り組み(3)リサイクル
プラスチック製品の分別・回収・リサイクルに協力し、サーキュラーエコノミーを進めましょう。
プラ新法の取り組みが広まると、自治体ごとに、プラスチック製品の資源回収もさらに進んでいきます。
今後は、店頭での資源回収も活発になり、リサイクルもさらにしやすくなります。
まとめ
今回は、サーキュラーエコノミーについて学びました。リデュース・リユース・リサイクルの「3R」からより進み、資源循環でごみのゼロを目指すサーキュラーエコノミー。
私たちが使うプラスチック製品も、サーキュラーエコノミーを見すえた「プラ新法」に沿ったものが続々と登場すると思います。
私たちも、サーキュラーエコノミーを意識した生活を送ることが大切です。たとえばプラスチック製品を買うときは、なるべく環境に配慮したものを選びましょう。
また、マイバッグやマイボトルなどを持ち歩いたりするなど、できることはたくさんあります。私たち一人ひとりも毎日、エコを意識し、積極的に生活に取り入れていきましょう。
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