公開日:2025.03.24
更新日:2025.03.24
プラスチックと自動車

自動車に使われるプラスチック

自動車にはたくさんのプラスチックが使われています。自動車の部品は、約3万点。その3分の1がプラスチックです。重さでは約10%がプラスチックです。プラスチックを使えば使うほど、自動車は軽くなります。

自動車に使われるプラスチックが増え始めたのは40年以上前からで、技術が進み、2019年の東京モーターショーではプラスチックだけを使って、軽自動車より軽い、850kgの重さの車が展示され、話題を呼びました。
自動車の安全性を守りながら軽くすることで、エネルギーを節約(省エネルギー)するのがプラスチックの役割です。
自動車のどこにプラスチックが使われている?
図は、どのような自動車部品にプラスチックが使われているか、表したものです。自動車が走るための燃料タンクや電池、タイヤ、ハンドルなど大切な部品のほか、エアバッグなど私達の体安全を守る部品にプラスチックは使われています。

自動車の軽量化に役立つプラスチック
今では電気自動車などガソリンや軽油(ディーゼル)を燃料としない自動車が増えましたが、昔は自動車の燃料はガソリンや軽油でした。そのガソリンや軽油は原油を精製して作られます。日本では原油のほとんどを輸入しています。2023年度でみるとサウジアラビア、アラブ首長国連邦など中東地域からの輸入がほとんどです。
中東地域では1973年~1980年にかけて2度の紛争*¹が起こり、原油の値段が10倍以上になりました。日本ではいろいろな商品の値段が上がりました。これを「石油ショック」といいます。
このため、自動車業界では少ないガソリンで長く走るための省エネルギーへの取り組みが始まりました。その中心となったのが、自動車車体を軽くすることです。
それまで自動車の部品は鉄やガラスの材料がたくさん使われてきましたが、軽いアルミニウムやプラスチックを使って自動車が作られるようになりました。自動車車体が軽くなることでこれまでよりガソリンを節約できるため、排気ガスの量も減りました。
最近は炭素繊維で強化されたプラスチック(炭素繊維強化プラスチック:CFRP)が使われているバックドア、ボンネットフード、プロペラシャフトなどにも使われています。
(参考記事)
強化プラスチックってどんなもの?|プラスチックとリサイクルに関する学習支援サイト|プラスチックのはてな
*¹1973年にイスラエルとアラブ諸国の間で起きた戦争と1978年に起こったイラン革命とその後のイラン・イラク戦争
自動車の外装で使われるプラスチック

自動車の外装は衝突時の被害をできるだけ小さくする、加工をしやすいことなどが求められます。私達を事故から守る外装材には様々な部品にプラスチックは使われています。衝突の衝撃を和らげるバンパーはポリプロピレンにエラストマーというゴムに似たプラスチックやフィーラーと呼ばれる細かい粒などを混ぜたプラスチックが一般的です。これは軽くて成形がし易く、衝撃に強い特徴があります。
ランプカバーにはポリカーボネートやアクリル樹脂など透明なプラスチックが使われます。ポリカーボネートはガラスと同じくらい透明で、ガラスに比べ、250倍割れにくい材料です。
タイヤには合成ゴムが使われます。合成ゴムは、摩り減りにくい、力が加わると変形し、力を加えるのをやめると元の形に戻る性質や、強さなどタイヤに必要な性能をバランスよく持っています。タイヤのかたちをたもつためのタイヤコードにはポリエステルやナイロンなどが使われます。
自動車の内装で使われるプラスチック

自動車の内装にはどんなプラスチックが使われているのでしょうか。私達がすわるシートは、外側がポリエステル、内側がポリウレタンでできています。ポリエステルはPETボトルやシャツに使う繊維と同じ素材で、丈夫で、熱に強い特徴があります。シートのクッションには軟らかい発泡ポリウレタンが用いられます。シートは走っている時の振動を吸収し、運転中の体を支えます。
ハンドルに使われるのは硬い発泡ポリウレタンです。運転中、手が滑りにくく、丈夫です。
エアバッグにはガス発生装置から出るガスの高温に耐え、外からの圧力に強いナイロンの糸が主に使われています。
自動車のエンジンルームに使われるプラスチック

プラスチックは自動車の心臓部であるエンジンルームにもたくさん使われています。ガソリンや軽油を入れる燃料タンクに使われるプラスチックは高密度ポリエチレン(HDPE)です。HDPEで作った燃料タンクは金属製に比べて、丈夫で、色々な形に成形ができ、しかも軽いという特徴があります。欧州では燃料タンクの90%以上がHDPE製です。日本でも2016年では50%程度だったHDPE製が、2017年には約60%、現在は80%を超えていると言われています。電気自動車やハイブリッド車に載せるリチウムイオン電池のセパレーターという部分には、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)使われています。PEやPPは、加工しやすいとか電気を通しにくいなどの性質があるので、電池のプラスとマイナスを分ける絶縁するのに使われます。
自動車にはたくさんの電子部品が使われています。電子部品には熱に強く、電気を通しにくいフェノール樹脂が使われています。コネクタにはエンジニアリングプラスチックと呼ばれるPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ナイロン、LCP(液晶ポリマー)が使われています。エンジニアリングプラスチックは熱に強い、外からの力に強いなどの性能を持っています。また電線やケーブルをつなぐコネクタにはエンジニアリングプラスチックとよばれるナイロン、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やスーパーエンプラとよばれるPPS(ポリフェニレンサルファイド)、LCP(液晶ポリマー)などが使われています。コネクタに必要な性能を考えてプラスチックが選ばれます。
自動車に使われるプラスチックのリサイクル
日本では2022年に274万台の自動車が廃棄されました。自動車に使われたプラスチックは3つの方法でリサイクルされます。1つはマテリアルリサイクルで、使い終わったプラスチックを熱でとかして資源としてもう一度使う方法です。バンパーやダッシュボード、ドアトリムなど大きな部品は、プラスチックの種類ごとに分け、マテリアルリサイクルしているものもあります。
使い終わったプラスチックを燃やすなどしてエネルギーとして使う方法もあり、サーマルリサイクルと呼びます。廃棄された自動車からいろいろな金属などを回収したあと破砕し、残ったもの(ASR Automotive Shredder Residue=自動車破砕残渣)からさらにアルミニウムなどを回収します。残ったプラスチックなどは燃やしてサーマルリサイクルします。
もう一つのリサイクル方法はケミカルリサイクルです。廃棄された自動車から回収したプラスチック製の部品を化学的に分解して原料に戻し、またプラスチックなどを作る方法です。自動車部品を含むいろいろなプラスチック製品のケミカルリサイクルは、化学メーカーなどがこれまで以上に取り組んでいます。
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